資産運用(投資)

2021年7月 6日 (火)

海外証券会社の税制と確定申告

個人が海外証券会社を利用して上場株式やデリバティブ(先物・オプション・FX・CFD)取引を行った際の税制と確定申告の方法について、ここにまとめます。ここで言う海外証券会社とは、国内で金融庁に登録して営業している業者(金融商品取引業者)以外の業者を指します。Interactive Brokers証券(IB証券)の米国口座、Firstrade証券、海外FX業者などを指し、外資系の国内業者(IB証券の国内口座・サクソバンク証券・IG証券など)は除きます。
まず注意点として、私は税制の素人であるため誤りがあるかもしれず、参考程度にして頂ければと思います。間違いがあればご指摘頂ければと思います。

目次

はじめに

基本的に海外の証券会社は、国内の証券会社よりも税制上不利になります。主な不利点として、損失の次年度への繰り越しが出来ない事などがあります。また、確定申告では株式の取引明細書を作る必要があります。

更にルール上は、証券会社に預け入れた外貨にかかる為替差益を申告する必要もあります。ただし一般的にはこれを自分で計算するのは困難です。殆どの人はこれが出来ているとは思えませんし、少額ならば税務署からの追及も無いだろうと思うところではあります(逆に言えば大金を動かしているのであれば税理士に頼むなどしてしっかりと申告したほうが良いです)。これに関しては国内証券会社を使用した外貨での取引についても同様に自分で計算する必要があるので、海外証券会社特有の問題という訳ではありません。
ただ、証券会社が口座内の全ての現金の動きを記載したレポートを発行しているなら、それを基に申告することが出来るかと思います。この場合の申告方法について、後に記述します。

また、海外証券会社での所得は原則申告が必要ですが、免除規定もあり、「給与等の収入金額が2,000万円以下である給与所得者は、1か所から給与等の支払を受けており、その給与について源泉徴収や年末調整が行われる場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときは、原則として確定申告を要しない」という規定があります。→No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

まず前提知識として、現物・差金決済の区分と、譲渡所得・雑所得の区分について次に解説します。

現物・差金決済の区分

金融商品は現物取引のものと差金決済取引のものに分かれます。この区分で税の申告方法が変わる部分があります。
現物取引は、金融商品を実際に受け渡しする取引です。購入時と売却時に、金融商品とその代金の受け渡しが発生します。
差金決済取引は、金融商品の受け渡しをせずに、決済時にその取引の損益額のみを受け渡しする取引です。
株式は現物取引となります。マージン口座(現金を借りて取引できる口座)での取引も現物取引です。
オプションとFXは現物取引によるものと、差金決済によるもの両方があります。
米国の株式・指数オプションは現物取引で、米国の先物オプションに関しては分かりません。これは権利行使時に差金決済されるか現物(原資産)の受け渡しが行われるかという問題とは別であり、オプション自身が現物方式か差金決済方式かの話であることに注意してください。
FXに関しては通常FX会社が提供するものは差金決済方式ですが、両替やIB証券のスポットFXなどは現物取引となります。
先物とCFDは差金決済となります。
取引明細書を作成するにあたって、現物取引の場合は購入時・売却時それぞれの代金について記載します。一方で差金決済の場合は、決済時の損益額のみを記載します。取引明細書の詳しい作成方法は後に記述します。
その他にもこの区分が影響する部分がありますが、これも後に記述します。

雑所得・譲渡所得の区分

株式・デリバティブの所得(配当除く)は譲渡所得・雑所得・事業所得のいずれかに分類されます。事業所得は事業規模で行う取引であり、税制上有利なのですが一般の個人には当てはまらないためこの記事では触れません。一般の個人は譲渡所得または雑所得として申告することになります。

譲渡所得・・・資産の譲渡にかかる所得(営利を目的として継続的に行われる取引にあたらない場合)
雑所得・・・営利を目的として継続的に行われる取引にかかる所得(事業規模を除く)、または譲渡所得にあたらない所得(資産の譲渡にあたらない差金決済方式による収入など)

デリバティブ(先物・オプション・FX(差金決済)・CFD)は雑所得(総合課税)となります。
FX(現物取引)は、両替と同じであり、デリバティブではありませんが、これも雑所得(総合課税)となります。
株式の譲渡に関しては、「営利を目的とした継続的な取引」であれば雑所得(分離課税)、そうで無いなら譲渡所得(分離課税)となります。この基準は曖昧ですが、簡便法が示されており、所有期間が一年を超えるものは譲渡所得、一年以下のものは雑所得として良いという通達があります。→通達 株式等の譲渡に係る所得区分
このどちらになるかは特別考えなくても確定申告は行えるのですが、この区分の違いで異なる点もあります。
雑所得では経費として認められる範囲が譲渡所得よりも広く、勉強のための書籍やセミナー代などを算入できる点があります。その他の違いについては後の項目で触れます。
次に、上場株式およびデリバティブの税制をそれぞれ具体的に解説します。

上場株式

・譲渡益は申告分離課税として20%の税率になります(復興特別所得税除く)。
・譲渡損失の次年度以降への繰り越しが出来ません(繰越控除は税制上の「金融商品取引業者等」に限り適用でき、海外証券会社は「金融商品取引業者等」では無いためです)。
・譲渡損益は、国内証券会社で取引した上場株式の譲渡損益と通算ができます。
・配当は、総合課税または申告分離課税で申告できます。申告分離課税として申告することにより、国内証券会社での上場株式の譲渡損失と損益通算できます。申告する上場株式の配当について両方の申告方法を混在させることはできません。
・一方で、海外証券会社での譲渡損失を配当(国内および海外での配当)と損益通算することはできません。
・その他、先物・オプション・FX・CFDなどとは損益通算ができません。
・債券は、「特定公社債」に当てはまるものは税制上上場株式と同じ扱いとなります。海外証券会社で購入できるものは通常これに当てはまると思われます。譲渡・償還による損益は申告分離課税となります。ただし利子は、総合課税が選択できず申告分離課税となります。利子は配当と同じく、国内証券会社での上場株式の譲渡損失と損益通算ができ、逆に海外証券会社での譲渡損失を利子と通算損益することはできません。

参考
No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

次に確定申告の方法です。
確定申告では、決済された株式についての取得費と売却代金を申告します。空売りであれば、取得費は決済(買戻し)時の支出額、売却代金は新規建て時の収入金額になります。それぞれの額について、原則として取引日の為替レートにて日本円に換算します。
しかし、株式を雑所得(営利を目的として継続的に行われる取引)として申告する場合であれば、継続適用を条件に「月初または前月末の為替レート」や「一月内の平均レート」などを使用することができます。→通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係
ただ、エクセル等の表計算ソフトを利用すれば一日ごとの為替レートを自動で適用させる事が出来るので、特別にこのようなレートを使う必要は無いかと思います。
譲渡損益にかかる為替レートは収入についてはTTB、支出についてはTTSを用います。→通達 外貨で表示されている株式等に係る譲渡の対価の額等の邦貨換算
この場合、TTMを用いるより節税になります。この通達の文面では、金融商品取引業者(つまり国内の証券会社)との取引を想定したものであるように見られますが、それに限定したものでは無いように読めますし、税務署に確認した限りでは海外証券会社にも適用できるようです。
配当はTTMを用います。
譲渡損益を算出する際の計算方法として、「総平均法に準ずる方法」を用います。→No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費 一方で、信用取引かつ差金決済の場合については「個別法」を使うという規定もあるのですが、海外口座におけるマージン口座(現金を借りて取引できる口座)での取引は金融商品取引法に規定する「信用取引」には当たらないと思われるため、この規定は適用しないようです。「総平均法に準ずる方法」について詳しくは後述します。

先物・オプション・FX・CFD

・総合課税の雑所得となります。
・損失の次年度への繰り越しが出来ません。
・雑所得(総合課税)以外の所得との損益通算ができません。海外口座での先物・オプション・FX・CFD内では損益通算が可能です。国内口座での先物・オプション・FX(差金決済)・CFDも雑所得ですが申告分離課税となるため、それらとの損益通算は出来ません。株式との損益通算は出来ません。

先物・CFDおよび差金決済のオプション・FX(通常のFX)は、決済損益のみを日本円に換算して記載します。現物取引のオプション(米国上場オプションなど)・FX(両替含む)は、新規建て時の受け渡し金額、決済時の受け渡し金額をそれぞれの時点の為替レートで日本円に換算して記載する必要があります。2つの差額が決済損益となります。
用いる為替レートですが、雑所得を生ずべき業務として申告する場合であれば、原則TTMである一方で継続適用を条件に収入をTTB、支出をTTSとすることができます。→通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係 これにより節税になりえます。雑所得を生ずべき業務とは、雑所得となる取引かつ、営利を目的として継続的に行われる取引のことで、比較的短期的な取引を行う傾向にある先物・オプション・FX・CFDはこれに該当しやすいと思います。ただ、長期保有しているFX・CFDについては分かりません。また、上場株式の項でも触れましたがこの所得として申告する場合は月初レート等を適用する方法も取ることができます。
これら先物・オプション・FX・CFDについては、取引明細書を提出する必要はありません(保管はしておいた方が良いと思います)。それぞれについて合計損益のみを確定申告書に記載すれば良いと思います。

損益の計算方法としては、現物取引のオプションとFXについては「総平均法に準ずる方法」を用います。→所得税法施行令 第百十八条
この規定では有価証券について「総平均法に準ずる方法」を用いると定めていますが、現物取引のオプションは有価証券に当てはまるようです。また、現物FXについては有価証券ではありませんが、それに準ずる扱いとなるようです。→国税不服審判所 (平成28年6月2日裁決)
先物・CFDおよび差金決済のオプション・FXについては規定がありませんので証券会社のステートメントに従うことになります。

オプションについて、権利行使または割り当てによって原資産の受け渡しが行われるもの(米国上場の株式・先物オプションなど)については、権利行使または割り当ての際はオプション自身に損益は発生せず、オプションを新規建てした際の受け渡し金額(プレミアム+手数料)は、権利行使または割り当てによって取得した原資産ポジションの新規建て金額の中に算入されます。

取引明細書の作成方法

私の方法を紹介します。また、取引明細書のテンプレートファイルも用意しています。
取引明細書の良い作成方法については私も試行錯誤中である上に表計算ソフトも慣れていないため、ベストなアドバイスは出来ないかもしれないことをまずご了承ください。また、私の方法について改善点等あれば教えて頂ければ幸いです。

まず為替レートを入手する必要がありますが、これには「電信売相場、電信買相場及び電信売買相場の仲値については、原則として、その者の主たる取引金融機関のものによることとするが、合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める。」という通達があります。→法第57条の3《外貨建取引の換算》関係
主たる取引金融機関が為替レートを公表していれば良いのですが、公表していないことが多い上にデータシートとしてダウンロードできなければ不便です。
私は、三菱UFJの公表している為替レート表を用いるのが良いと思います。→三菱UFJリサーチ&コンサルティング「1990年以降の為替相場」
このページの下部で、年ごとの為替レート表のファイルをダウンロードできます。

この為替レート表を基にエクセル等の表計算ソフトで取引明細を作成します。私は表計算ソフトとして無料のLibre Officeを使用しており、以下それを使用した例も挙げますが概ねエクセルも同じなので参考にできるかと思います。
この為替レート表を、表計算ソフトのファイルにシートとして挿入するか、コピー&ペーストします。取引明細を記載するシートとは別のシートにするのが良いと思います。
基本的には申告する年分の為替レートのみ用意すれば良いと思いますが、もし複数年の為替レートが必要な場合は繋ぎ合わせます。
日付は上から古い順に並べるようにします。vlookup関数(後述)で拾い上げられるようにするためです。複数年の為替レートを繋ぎ合わせる際はもちろん表の途中に余計な行が入らないようにします。
また、この三菱UFJ銀行の為替レート表は、休日の行も含まれており、休日の為替レートが空白になっています。vlookup関数を使用するにはこの空白行を削除する必要があります。
そのためには、フィルター機能を使い、為替レートの列を「空白でない」でソートし、その結果をコピーし貼り付けます。または空白でソートし、空白行を削除します。
Photo_20210708072101

株式の場合は少し厄介な点があり、確定申告では取得費の合計と売却代金の合計をそれぞれ記載しなければならない点です。空売りの場合は、新規建て時は売却代金、決済時は取得費の扱いになりますので、買建てと売建ての両方がある場合は、新規建て金額の合計と決済金額の合計をそれぞれ記載する訳では無いことに注意ください。ただしこの計算は表計算ソフトを用いれば何とかなります。

支出に記載する数値はマイナス、収入に記載する数値はプラスで統一しておくと便利だと思います。以後、これを前提にします。
株式・現物オプション・現物FXは総平均法に準ずる方法、先物・CFD・オプション(差金決済)・FX(差金決済)は証券会社のステートメントに従って計算します。
株式・現物オプション・現物FXについては、新規建て時と決済時の両方について取引を記載します。
私は試作として表計算ソフトで自動的に計算できるものを作成したので、その方法を説明しようと思います。
現物FXに関しては、外貨の為替損益に含まれますので、外貨の為替損益の計算方法で解説します。

私の作成した取引明細のテンプレートファイルは以下です。

ダウンロード - e58f96e5bc95e6988ee7b4b0e99b9be5bda25.ods
ダウンロード - e58f96e5bc95e6988ee7b4b0e99b9be5bda25.xlsx

odsファイルはLibreOffice用、xlsxファイルはExcel用です。
オレンジのセルは数式が入るセルです。数式の入っていない行にはオートフィルで適用できます。
為替レート表のシートには、参考として三菱UFJから取得した為替レート表を貼り付けていますが、ここは必要な期間のものに変えて下さい。vlookup関数内の、為替レート表への参照範囲は必要であれば変えて下さい(後述)。
その他、基本的な利用方法については「利用方法」シートにまとめていますが、詳しくはこの記事での解説を読んで頂ければと思います。

次に、取引明細の作成方法を一から解説します。テンプレートファイルを利用する場合も、次からの解説を読んで内容を理解した上で利用することを薦めます。また、計算の結果、不自然な値が算出されていないかどうかを確認してください。

株式およびオプション(現物取引)の取引明細

ここでは株式およびオプション(現物取引)の取引明細について、私の作成方法を詳しく解説します。配当については、この後の項目で触れます。
株式とオプション(現物取引)は取引明細の仕様は同一ですが、税区分は異なるためシートは分けた方が良いと思います。

ここでは株式を想定した用語を用いますが、現物オプションの場合は「株式」を「オプション」、「株数」を「数量」、「空売り」を「ショート」などに読み替えて下さい。
「総平均法に準ずる方法」について説明します。以下は株式の購入を行う際の説明になりますが、株式の空売りの際は「取得」を「空売り」、「保有株数」を「空売り株数」、「売却」を「買戻し」などに読み替えて下さい。
同一銘柄の株式について、取得した都度、取得金額(円換算額)を足していき、取得金額の合計(円換算額)を算出します。そして「取得金額合計(円)÷保有株数」がその時点での取得単価となります。
そして、株式の売却を行った際に、「売却金額(円)-(売却株数×取得単価)」が決済損益となります。
この取引後の取得金額合計(円)は、「保有株数残り×取得単価」となります。そして新たな取得単価を「取得金額合計(円)÷保有株数」で算出します。
参考ページ:No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費

以下は私の作成したテンプレートの画像です。
2_20210709065101

銘柄ごとに取引をまとめ、その中で取引を時系列に記載します。
空売りと買建ての両建てが可能な証券会社の場合は、空売りと買建ては別銘柄としてまとめます。
列として「銘柄名」「取引日」「数量」「約定代金」「手数料」「約定代金(円)」「手数料(円)」「その他の金額(円)」「合計金額(円)」「数量残」「建て金額残(円)」「平均建て単価(円)」「決済」「建て金額(円)」「決済損益(円)」「備考」というようなものを作っています。
前半の「銘柄名」~「手数料」および「その他の金額(円)」に手動で入力します。それぞれの列について説明します。

銘柄名
参考画像のように、銘柄名はその銘柄の欄の一行目、年度内初めの取引または期首残高(前年から持ち越された分)が記載された行のみに記載するようにしています。同じ銘柄の欄の2行目以降には銘柄名は記載しません。私の数式ではその銘柄の最初の取引または期首残高かを判定するのに、同じ行に銘柄名の記載があるかどうかを判定基準にしているためです。別の判定方法を用いる場合は、この辺りは自由にして良いです。
取引日
西暦を含めて日付を入力します。今年の場合は西暦は省略できます。
数量
買いはプラス、売りはマイナスの符号で取引株数を記載します。新規か決済かで列を分けても良いかと思いましたが、現状では一緒にしています。
約定代金
元々の通貨での約定代金を入力します。収入はプラス、支出はマイナスです。
手数料
元々の通貨での手数料を入力します。支出なのでマイナス表記となります。
約定代金(円)
ここでvlookup関数を使い、「約定代金」を円に直します。以下の数式を入力します。
= 約定代金セル * VLOOKUP(取引日セル, 為替レート表の範囲, 為替レート表内でのTTMまたはTTB/TTS列を示す列番号) 参考画像での行3の約定代金(円)セルの数式は
=$D3*VLOOKUP($B3,$為替レート表.$A$2:$E$500,IF($D3<0,3,4)) となっています。
下線部は為替レート表の範囲です。この例では500行までを指定範囲にしていますが、これは適当に多めを指定範囲にしているだけです。
ここでは「為替レート表」という名称の別シートを参照していますが、この別シート参照の式はLibre Officeのもので、エクセルと異なります。LibreOfficeでは「シート名.セル名」ですが、エクセルでは「シート名!セル名」となります。
為替レート表の指定範囲は以下のようになります。指定範囲の一列目を日付列にし、列項目名は含めません。
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為替レートについてTTMを用いる場合は、TTM列を表す列番号を入力します(上記画像の場合、5)。
TTBおよびTTSを用いる場合は条件式としてIF関数を用います↓
IF(約定代金セル < 0, TTS列の番号 ,TTB列の番号) これで、約定代金が0未満(支出の場合)であればTTS列の番号を示し、そうで無い場合(収入の場合)はTTB列の番号を示します。

ここではvlookup関数で指定している値は3つですが、4つ目の値として検索の型というのがあります。これは省略またはTrueまたは1にします。このようにすれば、参照する取引日が為替レート表に存在しない場合(休日などで)はその直前の日付の為替レートを返してくれます。この方法を利用するには、為替レート表内の日付は上から古い順に並んでいる必要があります。

また、$が前につく列文字・行番号・シート名は絶対参照となり参照先が固定されます。列文字のみ固定しておけば、セルを横に連続適用またはコピー&ペーストしても数式内のセル参照が維持され、縦に連続適用またはコピー&ペーストした際は行番号が追従するため便利です。参照する為替レート表は全固定にします。

私のテンプレートを使用する場合でvlookup関数内の為替レート表範囲を変更する場合は、「検索と置換」機能を利用すると便利です。以下はLibreOfficeのものですがExcelにも同等のものがあります。
2_20210718124201
標準では「$為替レート表.$A$2:$E$500」(エクセルでは「$為替レート表!$A$2:$E$500」)となっていますのでこれを検索し、置換先に新しい範囲を入力します。「すべてのシート」にチェックを入れ、「検索場所」を「数式」にします。置換処理後は正常に置換されているか確認してください。
また、LibreOfficeのバグなのか数式内に「$為替レート表.$A$2:$E$500」と入力してもいつの間にか「$為替レート表.$A$2:$為替レート表.$E$500」のように無駄に長い表記に変わっていることがありましたので、ご注意ください。

手数料(円)
手数料セルの値を日本円に変換します。上記の数式の、約定代金セルの部分を手数料セルに置き換えます。また為替レートについては、約定代金と同時に(合算して?)受け渡しがされる手数料分についての扱いが良く分かりませんので、個人的に合理的だと思うTTMを採用しています。私の参考シート内では行3は以下になっています。
=$E3*VLOOKUP($B3,$為替レート表.$A$2:$E$500,5)
その他の金額(円)
取引金額に算入するその他の金額が発生することがありますので、この項目を設けています。株式ポジションがオプションの権利行使によって取得したものである場合は、当該オプション代金をここに記載します。金利や貸株料については、ここに記載するのではなく別に計算したほうが良いかもしれません。
合計金額(円)
約定代金(円)+手数料(円)+その他の金額(円)を示します。数式はそのまま各セルを足したものです。
数量残
取引後の保有株数を示します。ここから数式が少し複雑になっています。
まず、その銘柄の初めの取引かどうかを同行に銘柄名の記載があるかどうかで判定し、初めの取引で無い場合、一行上の数量残セルと今回取引された数量を足します。初めの取引の場合はそのまま今回取引された数量を数量残とします。
一行上のセル参照についてですが、そのまま指定すると、行の挿入や削除に伴ってセル参照が狂います。なのでそのような操作があっても常に一行上のセルを参照できるようにOFFSET関数を用います。基準セルの一行上のセルを参照する式は以下になります。
OFFSET(基準セル, -1, 0) ここまでが基本なのですが、私の方法ではこれにエラー判定の条件文を加えています。ドテン注文という、一つの買い取引で売り建玉を決済すると同時に新規買建を行ったり、その逆を行ったりするものがあるのですが、このような取引を記載しようとすると、数式がもっと複雑なことになるのでこれを防ぐためにエラー判定の条件文を加えています。ドテン注文がある場合は、決済取引と新規取引に分けて記載します。手数料等も分けます。
数式は以下となります。IF関数では、括弧内(引数)の1番目に「条件判定式」、2番目に「条件がTrueの時に示す値」、3番目に「条件がFalseの時に示す値」を記述します。分かりやすいように数式の一階層目を整形しています。
= IF(
TRIM(銘柄名セル) = "",
IF((数量セル + 一行上の数量残セル) * 数量残の一つ上のセル < 0, "数量エラー", 一行上の数量残セル),
0
) + 数量セル
エラー判定式については、今回の数量残と前回の数量残の符号が逆の場合にエラーにするため、「今回の数量残×前回の数量残<0」の場合にエラーにするようにしました。
私の参考シート内では行3の数量残セルは以下になっています。
=IF(TRIM($A3)="",IF(($C3+OFFSET($J3,-1,0))*OFFSET($J3,-1,0)<0,"数量エラー",OFFSET($J3,-1,0)),0)+$C3
建て金額残(円)
建て金額を合計した残高(円)を示します。「建て金額」とはポジションの取得価格のことであり、新規取引時の「合計金額(円)」になります。つまりこの列では現在保有しているポジションの取得価格合計を示します。
※ポジションとは、株式などを買い(ロング)または空売り(ショート)して未決済のものを言います。株式を購入した場合は単に株式の取得・保有と言えば良いですが、空売りした株式については株式を取得・保有しているとは言えません。しかしポジションという言葉を使えば、空売りしたものについてもポジションを取得・保有していると言えます。
まずその行の取引が新規注文か決済注文かで数式が異なるため、それを判断する条件式を入れています。前回の数量残と今回の取引数量の符号が一致しない時は決済注文だと判断します。そのために、両者を掛け合わせて0以上であれば新規注文だと判断しています。
それ以前に、この行の取引がその銘柄の初めの場合は新規注文になります。
新規取引かつその銘柄の初めの取引の場合は、合計金額(円)が建て金額残(円)となります。
新規取引で前回取引がある場合は、前回の建て金額残(円)+今回の合計金額(円)となります。
決済取引の場合は、平均建て単価×数量残となります。
数式は以下です。
= IF(
TRIM(銘柄名セル) = "",
IF(一行上の数量残セル * 数量セル >= 0, 一行上の建て金額残(円)セル + 合計金額(円)セル, 数量残セル * 平均建て単価セル),
合計金額(円)セル
)
私の例では、以下になります。
=IF(TRIM($A3)="",IF(OFFSET($J3,-1,0)*$C3>=0,OFFSET($K3,-1,0)+$I3,$J3*OFFSET($L3,-1,0)),$I3)
平均建て単価
建て金額残(円)を数量残で割ったものです。取引後の値となります。そのままだと数量残が0の場合はエラーとなるため、数量残が0の場合は0を表示する条件式を入れています。また、株式の取得にかかる平均取得単価の計算時には端数の切り上げをするという通達があるため(1単位当たりの取得価額の端数処理)、ここではINT関数を使用して切り上げを行っています。オプションの場合でもこれを適用して良いかと思います。数式は以下となります。
= IF(
数量残セル = 0,
0,
INT(建て金額残(円)セル / 数量残セル)
)
私の例では以下になります。
=IF($J3=0,0,INT($K3/$J3))
決済
これは分かりやすいように決済取引の場合に○を表示するものです。後ほど集計時に決済取引のみをフィルターで絞り込むのにも使います。数式は以下です。
= IF(
TRIM(銘柄名セル) = "",
IF(一行上の数量残セル * 数量セル >= 0, "", "○"),
""
)
私の例では以下です。
=IF(TRIM($A3)="",IF(OFFSET($J3,-1,0)*$C3>=0,"","○"),"")
建て金額(円)
決済された株式にかかる、建て金額(ポジション取得価格)を示します。決済の場合に「-1×取引数量×取引前の平均建て単価」を示します。数式は以下です。
= IF(決済セル = "○", -数量セル * 一行上の平均建て単価セル, "") この式中の○について、決済セルの○と同じものであることを確認してください。記号と漢数字で異なります。
私の例では以下です。
=IF($M3="○",-$C3*OFFSET($L3,-1,0),"")
決済損益(円)
決済された株式にかかる損益(円)を表示します。決済の場合に合計金額(円)と建て金額(円)を足したものを表示します。数式は以下です。
= IF(決済セル = "○", 合計金額(円)セル + 建て金額(円)セル, "") 私の例では以下です。
=IF($M3="○",$I3+$N3,"")

これで一通りテンプレートは完成しました。もっと良いやり方はあると思いますが、取りあえずはこれで動くと思います。
前半の「銘柄名」~「手数料」および「その他の金額(円)」を手動で入力し、この他の列は自動入力となります。自動入力の列は全ての行にオートフィルで一括適用できます。
しかし期首残高(前年から持ち越された分)がある場合は、その銘柄の初めの行の「数量残」「建て金額残(円)」「平均建て単価(円)」に手動で入力し、そこには数式は入れません。その他の列には入力不要です。

オプションについて、権利行使によって原資産ポジションを取得するタイプのものについて権利行使が行われた際は、オプションの取引明細上では便宜的に約定代金0での決済扱いにし、その決済損益についてはそこから削除して、権利行使によって取得した原資産ポジションの建て金額に算入します。

決済損益合計などを計算する時はSUM関数を使います。「=SUM(合計したいセルの範囲)」で表せます。
株式の場合、所得費の合計と収入金額(売却金額)の合計を確定申告書に記載する必要がありますが、これらはフィルター機能を使って計算できます。
フィルターで「決済セル=○」かつ「合計金額(円)セル>0」で絞って出てきた合計金額(円)と、「決済セル=○」かつ「建て金額(円)セル>0」で絞って出てきた建て金額(円)を足した合計が収入金額合計となります。
取得費についても同じ要領で、「決済セル=○」かつ「合計金額(円)セル<0」で絞って出てきた合計金額(円)と、「決済セル=○」かつ「建て金額(円)セル<0」で絞って出てきた建て金額(円)を足した合計が取得費合計となります。
フィルター機能以外ではSUMIFS関数やDSUM関数でも算出できます。
ただし確定申告書には「譲渡のための委託手数料」を記載する項目があり、つまり売却時の手数料を別に申告するようになっているのですが、空売り取引があるとその計算は複雑なことになってしまうため、この項目は使わないで良いと思います。税額の計算には影響しません。
払った貸株料や金利などは、必要経費として記載します。
確定申告書に記入する際はマイナスの符号は除きます。
オプションの場合は、決済損益を合計したものを雑所得(総合課税)として記載するだけです。

外貨を円貨換算した際は端数が出ますが、確定申告書に記載する数値に端数が出た際は納税者有利という原則に従って、収入の場合は切り捨て、支出の場合は切り上げにします。これは収入をプラス、支出をマイナスとしているのであればINT関数で実現できます。

デリバティブ(差金決済)の取引明細

差金決済方式による先物・オプション・FX・CFDに関しては決済時の取引のみ記載すれば良く、簡単です。
上記、株式およびオプション(現物取引)の取引明細の中の、「銘柄名」~「合計金額(円)」列を転用し、「取引日」の名称を「決済日」、「約定代金」の名称を「決済損益」に直せば良いと思います。そして「合計金額(円)」をSUM関数で合計したものを申告すれば良いと思います。手数料は別に申告することも出来ます。
以下は私のテンプレートの画像です。
Photo_20210710104101

または、証券会社の取引明細をCSVなどでダウンロードし、それを表計算ソフトにコピー&ペーストまたはシートとして挿入し、そこに数式を加えて計算する方法も出来ると思います。

配当の明細

株式の配当に関しては、確定申告では決められた書式に記載することになりますが、そのための元となる明細を作っておくと便利です。
私のテンプレートでは以下になります。
2_20210719022001

「配当額」には現地での源泉徴収税が課される前の配当額を記入します。
「現地源泉徴収税額」は、現地(外国)で課された税額です。
「差引収入額」は、「配当額」から「現地源泉徴収税額」を引いた、手取り収入です。
その後の列ではそれぞれの項目を円に直しています。
また、最後の「差引収入額(円)」はINT関数で納税者有利方向に切り捨てを行っています。
配当を申告する際は、この明細の「銘柄」「差引収入額(円)」を用います。
確定申告書作成コーナーを利用する時は、配当集計フォームにこれらをコピーすることができます。
この明細は外国税額控除に利用することもできます。

外貨の為替損益の計算方法

証券会社に預け入れた外貨について、その外貨の支出を伴う取引(資産の購入・他通貨への転換・決済損・手数料払いなど)を行った時、その時点で為替損益が出たものと認識します。
この計算は複雑なので、一般的にはなるべく外貨の現金を持っておかず、債券ETFや債券などに変えて持っておくほうが良いと言えるかもしれません。MMFがあれば楽なのですが、海外証券会社ではMMFは見かけません。
ただいくら頑張っても完璧に外貨保有をゼロにすることは出来ないので、完璧に申告しようとすれば為替損益の計算は必要になります。
ここで外貨の為替損益の申告方法について解説しますが、私は素人であるためこの記事の内容を鵜呑みにせずご自身でも出来るだけ確認いただければと思います。

この為替損益は雑所得(総合課税)となります。複数通貨を扱っている場合はそれぞれについて計算する必要があります。
計算方法は、株式と同じく「総平均法に準ずる方法」を使用することになるようです。→国税不服審判所 (平成28年6月2日裁決)
計算対象の外貨について、その外貨の収入を伴う取引(資産の売却・円を含めた他通貨からの転換・決済益・配当など)が行われた時、その日の対円為替レート(原則TTM)をその外貨の取得レートとします。
外貨収入がある都度、その日の為替レートでの円換算額を足していき、円換算の残高を算出します。そして「円換算残高÷外貨残高」がその時点での平均取得レートとなります。
そして、その外貨の支出を伴う取引(資産の購入・他通貨への転換・決済損・手数料払いなど)を行った際に、「外貨支出額×(その日の対円為替レート(原則TTM)-平均取得レート)」を為替損益として認識することになります。
この取引後の円換算残高は、「外貨残高×平均取得レート」となります。そして新たな平均取得レートを「円換算残高÷外貨残高」で算出します。
参考サイトとして、外貨預金についての為替損益の計算方法を記したサイトですが挙げておきます。
外貨預金 損益状況(簡易集計) (ソニー銀行)

ここでは証券会社から、口座内の全ての現金の動きを記載したレポートが発行されている場合についての申告方法を記述します。
現物FX取引(通常のFXではなく現金を実際に為替取引するFX)を行っている場合も、このレポートに記載されていることを確認してください。ただし現物FXの手数料(スプレッド以外)が課されている場合、その手数料の損失分を申告するにはここでの為替損益計算ではできませんので、別に行う必要があると思います。用いる為替レートについては原則TTMですが、「営利を目的とした継続的な取引」(単なる両替では無く、FXでの利益を狙ったFX取引であれば、ほとんどこれに当てはまると思いますが)であればTTS、TTBを使用することが出来ると思われます(ただし一応税務署に確認してください)。
ちなみに、国内口座の特定口座内で行う外貨取引の場合は少し計算方法が異なるかもしれず(確かではありませんが)、特定口座内では同日中に同一銘柄の売りと買いが行われた時、常に買いが売りよりも先に行われているとみなすようです。ここでは海外口座についての申告方法になります。

エクセルやLibre Officeなどの表計算ソフトを使用します。私はLibre Officeを使用しており、それを利用した例も挙げますが関数の式などはほとんどエクセルと共通だと思います。
私は海外証券会社としてIB証券を使っていますが、IBでは資金収支報告書をCSVでダウンロードできます。また、Firstrade証券についてはAccount Historyを基にすることが出来るかと思いますが、こちらの場合は余計な項目も含まれているため整理する必要があるかと思いますので少し面倒です。ダウンロードしたファイルは表計算ソフトにシートとして挿入、または内容をコピー&ペーストします。
また、同期間に対応する為替レート表も用意します(休日行は削除)。為替レート表の用意の方法については「取引明細書の作成方法」内で説明しています。

IB証券のファイルでは、「基準通貨サマリ」の行がありますがこちらは他通貨の取引も基準通貨に直して表記しているもので、不要ですので削除します。JPYの行も削除し、USDなど目的の外貨の行のみにします。
このファイルには二種類の日付、報告書基準日と活動日が記載されています。恐らくは活動日が取引日であり、報告書基準日は金額が最終的に決定した日付であるようです。アクティビティステートメントに記載の日付は活動日と一致するようですので、活動日を採用したほうが良いかと思います。
ただし活動日は時系列に並んでいません。時系列に並べ替えるために、フィルターで活動日を昇順にします。それに伴い、「残高」列の値も狂うので、この「残高」列は使用しません。IBのデータにおける借方は支出、貸金は収入です。
活動日が前年の日付になっていることがありますが、これで良いと思います。私が確認した限りでは、当該取引は当年のアクティビティステートメントに前年の日付で記載されていましたのでアクティビティステートメントと整合性を取るなら活動日で良いかと思っています。ただし為替レートは前年分を少し入れる必要があります。
また、日付のセルが日付形式として認識されなかったので、その場合は、追加の列を挿入し、そこに「=DATEVALUE(対象セル)」という数式を入れて日付形式の値を表示させます。
借方・貸金列について、空白セルに見える部分でも半角スペースが入力されていましたので、「検索と置換」などで空白に置き換えます。

FirstradeのAccount Historyについては、これもダウンロードできますがフィルターなどで不要な行を削除する必要があるかと思います。私の場合、「MARK TO MARKET」「XFER CASH TO MARGIN」「XFER MARGIN TO CASH」などのアクティビティが不要そうに思えました。ただ正確なことは分かりません。

厄介な点は、仮に海外口座をマージン口座(現金を借りて取引できる口座)にしている場合、借入が発生して口座内の現金残高がマイナスになることがある点です。その場合、恐らくは、借入部分を除いて計算する必要があるのではないかと思います。
何らかの支出で残高がマイナスになる時、そのマイナス分については、元々保有していた外貨を支出したのではなく、借り入れた外貨で支出を行った部分になります。借入金も現金収入ではありますが、即座に支払いに充てられるため為替損益は0になると思います。
逆に何らかの収入によって残高のマイナス(負債)を解消する時、その収入は即座に負債の支払いに充てられていることになるので、負債の解消に充てられた分の収入については為替損益は0になると思います。ただし、その収入が入金によるものの場合は、その収入にかかる取得レートは以前のものとなるため、為替損益が発生します。このケースには別に対処するとして、基本的には以下のことが言えると思います。
残高がマイナスとなる外貨支出がある時は、残高が0になるまでの支出を支出額として認識し、逆に残高がマイナスの状態からプラスの状態になる外貨収入がある時も、残高がプラスになってからの収入を収入額として認識するべきかもしれません。また、残高がマイナス圏に留まる範囲での現金の動きは無視するべきかもしれません。
そのために、支出と収入については外貨残高がマイナスにある範囲のものを除くように調整し、計算に用いる円換算残高については外貨残高がマイナスの時は0になるように調整する必要があります。

私の作成した計算書のテンプレートも用意しました。

ダウンロード - e782bae69bbfe6908de79b8ae8a888e7ae97e99b9be5bda22.ods
ダウンロード - e782bae69bbfe6908de79b8ae8a888e7ae97e99b9be5bda22.xlsx

odsファイルはLibreOffice用、xlsxファイルはExcel用です。
基本的に、オレンジ色のセルには数式を適用し、白色のセルには手動入力します。
為替レート表は必要な期間のものに変えて下さい。
為替レート表を参照するvlookup関数の内部も必要であれば変えて下さい(後述)。

以下はテンプレートの画像です。参考としてデータを記入してあります。
1600

このテンプレートに、証券会社からの「収入」「支出」のデータを貼り付けるのが早いと思います。複数の外貨がある場合はシートを分けるなどして別個に計算書を作ります。
この計算書の作成方法について一から解説します。テンプレートを利用する場合も、この解説を読んでください。
数式の結果として不自然な値が算出されていないことを確認してください。
外貨の支出はマイナス、収入はプラスで記載されているとします。
上記画像のように初めの行は年初における残高(期首残高)とし、「残高」「残高(円)」「平均取得レート」について手動で入力します。年初に残高が無かった場合、空白または0にします。この下の行から各列へ数式を記入します。
それぞれの列について解説します。
また、マージン口座を使わない場合は複雑な数式は必要ないため、非マージン口座用の計算書の作り方および数式も併記します。ただしテンプレートはマージン口座対応の計算書になっており、非マージン口座でもマージン口座対応の計算書を用いることが出来ます。

通貨
一つのシート内で複数の通貨の計算書を入れる場合はこの列があれば良いと思います。
取引日
証券会社からのデータを貼り付けますが、前述したように日付形式として認識しない場合はDATEVALUE関数で日付形式に直します。
取引内容
証券会社からのデータを貼り付けます。
支出
外貨支出です。証券会社からのデータを貼り付けます。数値がマイナスである必要があります。同じ行の支出セルと収入セルには同時に値は入りません。
また、支出・収入が同じ列に記載されており符号で判断する場合は、支出・収入列の代わりに収支列をつくります。
その場合、以後の数式内の支出セルをIF(収支セル < 0, 収支セル, 0)に置き換え、
収入セルをIF(収支セル >= 0, 収支セル, 0)に置き換えれば良いと思います。
収入
外貨収入です。数値はプラスとなります。その他注意点は上と同じです。
残高
支出または収入の取引後の外貨残高を表します。証券会社からのデータがあればそれを用いることもできますが、数式としては以下になります。
= 一つ上のセル + 支出セル + 収入セル収支列を用いている場合は以下になります。
= 一つ上のセル + 収支セル
支出(調整後)
残高がマイナス圏にある範囲の支出を除いた支出です。残高がマイナスの時のみ、支出セルの値と異なっていることを確認してください。分かりやすいように数式の一階層目を整形しています。
= IF(
残高セル < 0,
IF(残高セル <= 支出セル, 0, 支出セル - 残高セル),
支出セル
)
非マージン口座用・・・この列は作らず、以後、数式内の「支出(調整後)セル」を「支出セル」に置き換えてください。
収入(調整後)
残高がマイナス圏にある範囲の収入を除いた収入です。残高がマイナスの時またはマイナスから回復する時のみ、収入セルの値と異なっていることを確認してください。
= IF(
残高セル < 0,
0,
IF(収入セル > 残高セル, 残高セル, 収入セル)
)
非マージン口座用・・・この列は作らず、以後、数式内の「収入(調整後)セル」を「収入セル」に置き換えてください。
為替レート
取引日の為替レートをvlookup関数で拾い上げます。vlookup関数の説明については、「株式およびオプション(現物取引)の取引明細」内を参照ください。
= VLOOKUP(取引日セル, 為替レート表の範囲, 為替レート表内でのTTMを示す列番号)ただし現物FX取引がある場合で、それについてTTS,TTBを使用する場合は、「取引内容」セルにFX取引を示す文言があることを条件に、「支出」セルがマイナスであればTTS、そうでなければTTBを使うというようにすれば良いと思います。数式では例えば以下のようになります。
= VLOOKUP(
取引日セル,
為替レート表の範囲, 
IF(
COUNTIF(TRIM(取引内容セル), "為替取引からの*") = 0,
TTMの列番号,
IF(支出セル < 0, TTSの列番号, TTBの列番号)
)
)
下線部にFX取引を示す文言を入れます。「*」と「?」のワイルドカードが使用できます。*は0文字以上の任意の文字列、?は任意の1文字を表します。ただしLibreOfficeの場合はツール→オプション→LibreOffice Calc→計算式から、「数式にワイルドカードを使用する」にチェックが入っていることを確認してください。Excelの場合は標準で大丈夫だと思います。私の場合ではテンプレート画像にもあるように「為替取引からの取引通貨レッグ」「為替取引からの手数料」がFX取引に該当しますので、下線部の文言は上記のようになります。
入金分の取得レート
自分で口座に外貨入金したことによる収入の場合、その分を取得した際の為替レートを手動で入力します。それ以外では空白にします。
入金された時点が外貨の取得日(取引日)とはならないため、当日の為替レートが適用できないためです。
収入(調整後)(円)
収入(調整後)を円に直します。「入金分の取得レート」に記載がある場合はそれを用い、それ以外は「為替レート」を用います。
= IF(TRIM(入金分の取得レートセル) = "", 為替レートセル, 入金分の取得レートセル) * 収入(調整後)セル非マージン口座用・・・列名称を「収入(円)」に
残高(円)
収入(調整後)(円)を合計した残高です。取引後の残高となります。
支出の場合は「外貨残高×取引前の平均取得レート」となり、収入の場合は「取引前の残高(円)+収入(調整後)(円)」となります。
また、外貨残高がマイナスの時は0を表すようにします。
= IF(
残高セル < 0,
0,
IF(支出(調整後)セル < 0, 残高セル * 平均取得レート列内の一つ上のセル, 一つ上のセル + 収入(調整後)(円)セル)
)
非マージン口座用・・・= IF(支出セル < 0, 残高セル * 平均取得レート列内の一つ上のセル, 一つ上のセル + 収入(円)セル)
平均取得レート
取引後の平均取得レートを表します。
= 残高(円)セル / 残高セル
入金による負債解消額
自分で口座に外貨入金し、口座のマイナスを解消した際に、そのマイナス解消額を表します。
= IF(TRIM(入金分の取得レートセル)= "", 0, 収入セル - 収入(調整後)セル)非マージン口座用・・・この列は作りません。
負債解消に伴う為替損益(円)
= 入金による負債解消額セル * (為替レートセル - 入金分の取得レートセル)非マージン口座用・・・この列は作りません。
合計損益(円)
= 支出(調整後)セル * (平均取得レート列の一つ上のセル - 為替レートセル) + 負債解消に伴う為替損益(円)非マージン口座用・・・= 支出セル * (平均取得レート列の一つ上のセル - 為替レートセル)列名称を「為替損益(円)」に

外貨を自分で入出金したものについては外貨取引にあたらないため、以下のことを行います。
入金の場合は前述のように、「入金分の取得レート」セルに送金元で取得した際の為替レートを入力します。
出金の場合はその行の「合計損益(円)」セルの値を削除します。そして一行上の「平均取得レート」列の値が、当該出金分の平均取得レートとなりますので、その値を記録しておきます。

「合計損益(円)」をSUM関数で合計したものを雑所得(総合課税)として申告します。年度内最後の取引の行の「残高」「残高(円)」「平均取得レート」の値は翌年の期首残高に記入することになります。

2020年5月16日 (土)

雑所得と株式の損益通算をする方法

所得税制上は、先物・FX・オプションなどの雑所得の損益と、株式の損益を通算することが出来ません。しかし、金融商品であるオプションを用いることによって、それが多かれ少なかれ可能となると思われるので、その方法を紹介しようと思います。
雑所得には2種類あります。国内の証券会社を通じて取引する先物・FX・オプションは、特例として分離課税の雑所得になります。海外での先物・FX・オプション等は通常の総合課税の雑所得となります。
私が試したのは後者の雑所得と株式との損益通算なのですが、前者でも行けるかもしれません。
雑所得(総合課税)を損益通算する場合、海外の証券会社で扱うオプション(株式オプション)を使用します。雑所得(分離課税)の場合は、国内の証券会社で扱うオプション(かぶオプ)を使用します。
どちらの場合でも原理は同じですが、国内での「かぶオプ」でどの程度のことが出来るのか分かりません。出来たとしても、取引コストは高くなると思います。
ここでは海外の証券会社で行う、雑所得(総合課税)と株式の損益通算の方法を紹介します。

海外の証券会社では、IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ証券)が行いやすいです。オプションのスプレッド取引がかなり自由にできるためです。Firstrade証券もスプレッド取引ができますが、その組み合わせに制限があるようなので、この記事で紹介するスプレッド取引ができるかどうかは確認してみてください。スプレッド取引が出来ない場合でも、個別に注文を出すことは出来ます。

原理としては、オプションは権利行使によって株式に変換できることを利用します。その時の損益ですが、権利行使した(された)オプションは決済された訳では無いのでオプションの損益は発生せず、その損益はそのまま変換後の株式に加算されるようです。
つまり、オプションを決済するか権利行使するかによって、任意にオプションの損益を株式の損益に移すことが出来るということです。
株式のロングを模倣したオプションと、ショートを模倣したオプションを両建てし、株式価格が上下どちらに動いたかによって、どちらかのオプションを権利行使し、その他のオプションを決済します。

なるべくスプレッドコストを抑えるために、流動性の高いオプションを選びます。例えば、SPY、QQQ、IWM、EEM、VXX、Apple、Microsoftなどのオプションが挙げられると思います。これらのオプションは残存期間にもよりますが比較的近い満期であれば1ティック(最小値幅)のスプレッドコストで済むと思います。また、価格水準が高い銘柄のほうがスプレッドコストは相対的に小さいので、スプレッドコストが抑えられます。ただし配当を生じる銘柄のオプションについては、配当が発生する日を期限内に入れないようにしたほうが良いと思います。配当落ち日があると事情が複雑になります。

まず基本的な方法は、ボックススプレッドを作る方法です。
具体的には、2つのシンセティックを組み合わせます。1つめは、原資産価格より上の権利行使価格でプット買い+コール売り(株式のショートを合成したポジション)を行います。2つめは、原資産価格より下の権利行使価格でコール買い+プット売り(株式のロングを合成したポジション)を行います。そして原資産がどちらかに変動するのを待ちます。
オプションに損失を発生させ、株式の利益としたい場合、利益の出ているインザマネーオプションを権利行使し、そこで得られた原資産の反対売買+その他のオプションの決済を行います。
オプションに利益を乗せ、株式を損失としたい場合は、損失になっているインザマネーオプションを権利行使し、そこで得られた原資産の反対売買+その他のオプションの決済を行います。

注意点がいくつかあるので記します。
・ロングオプションがインザマネーとなるように、プット買いは原資産より上の権利行使価格、コール買いは原資産より下の権利行使価格で仕掛けます。そうしないとこちらの任意で権利行使ができません。米国株式オプションはアメリカンタイプなので、期限前権利行使が可能です。
・権利行使価格は、原資産価格からなるべく離します。期限前権利行使をした際に、オプションに残った時間価値が無駄になるのをなるべく防ぐのが一つです。2つめの理由は、アウトオブザマネー(OTM)のショートオプションの損益の影響をなるべく抑えるためです。例えばオプションを損失とさせたい場合でも、ショートオプションに利益が乗っているとその分が相殺されます。
・損益通算の額は、原資産の反対売買とオプションの決済を行った時点で決定します。権利行使の時点では決定しません。どちらを先に行っても良いです。
・原資産価格が、どちらかの権利行使価格を超えては権利行使できないので、その前に権利行使を行います。
・権利行使価格を原資産価格から離す必要があるので、必然的に必要資金が多くなります。

もっと細かく注意点も書けますが、難しいので省略します。

以上は基本的な方法ですが、もっと簡単な方法もあります。上記の方法では4つのオプションレッグを使用する必要があり、コストが嵩み、必要資金も多いです。次に紹介する方法では、少し制限があり変則的ですがコストが多少抑えられ、必要資金も少なくなります。

インザマネーのコールスプレッドを使用する方法です。
原資産価格からできるだけ下の権利行使価格で、コール買い+コール売りのスプレッドを作ります。
ディープインザマネーのコール買いは原資産のロングの代替で、ディープインザマネーのコール売りは原資産のショートの代替です。
この方法では、コール買いの部分では権利行使ができますが、コール売りの部分では権利行使は自分からは出来ません。期限になって権利行使されるのを待つ必要があります。
この方法の欠点は、コール売りの部分が期限前権利行使にさらされる可能性があることです。これを避けるために、まず市場参加者のオプション保有残高(open interest)がほとんど無い銘柄(ウィークリーオプションに多い)については、コール売りの価格が本質的価値を下回らないように注文します。本質価値を下回る価格で約定してしまうと即座に期限前権利行使をされる可能性が高いです。実際はスプレッドとして注文するので、個別のレッグについて価格指定は出来ないのですが、コール売りについて0.02以上の時間価値を残したものを選ぶと良いと思います。
次に、市場参加者のオプション保有残高(open interest)が十分に多い銘柄(マンスリーの満期日に多い)の場合は、期限前権利行使の可能性がほぼゼロだと思うので、もっと好きに権利行使価格を選べます。
権利行使されたオプションの割り当ては基本的にランダムに行われるようなので、市場参加者のオプション保有残高が多いほど、自分に割り当てが来る確率が下がります。
いずれの方法でも、なるべく原資産価格が権利行使価格を下回らないように、権利行使価格はなるべく下に設定します。
また、満期日前に原資産に配当が発生するものについては配当落ち日に余計なコストがかかったり期限前権利行使されたりする可能性があるため、配当日を満期内に入れないようにするのが簡単です。

オプションに損失を出したい場合、原資産価格が上がればコール買いを権利行使し、「原資産の売り+コール売りの決済」を行います。原資産価格が下がる場合はオプション期限近くまで待ち、「原資産のロング+コール買いの決済」を行い、そのまま期限を迎えてコール売りが権利行使されるのを待ちます。

もし配当日が満期内に入る場合は、以下に気をつけます。
・配当落ち日直前になると、時間価値の無いショートコールは権利行使される可能性が高いので、ショートコールが権利行使されたくない状況であれば少し前にショートコールを決済します。
・一方で時間価値の無いロングコールについては配当落ち日の前に権利行使をしないと、配当額分かそれに近い額の損失を被ります。

その他注意点は以下です。
・仮に期限前権利行使をされても全体としての損益には影響ありませんが、それが権利行使されたくなかった状況の場合、コール買いを権利行使などして手仕舞いします。
・仮に原資産価格が権利行使価格を下回りそうなら、諦めてコールスプレッドを全決済します。
・プットスプレッドでは無くコールスプレッドなのは、期限前権利行使の可能性が低いからです。
・このコールスプレッドの当初の必要資金はかなり少ないですが、後でカバードコール(株式ロング+ショートコール)やプロテクティブコール(株式ショート+ロングコール)に変わるため、必要資金は多くなります。実際にカバードコールとプロテクティブコールの注文の確認画面を見て、委託証拠金を確認してみてください。

2019年10月12日 (土)

IB証券における取引所手数料について

IB証券では、取引手数料に関してIBから直接請求されるものに加えて、取引所手数料が発生する場合があります。他にも発生するものはあるのですが、金額が大きいのは取引所手数料となります。
IB証券の手数料体系は、米国株式の場合、固定と変動に分かれ、米国オプションの場合は変動のみとなります。
固定プランの場合は取引所手数料は直接関係がありません。固定料金の中に含まれています。
変動プランの場合は、取引所手数料が、IBから直接請求される手数料の他に発生します。

取引所手数料が発生することを前提にしても、小口取引であれば変動プランのほうが安い可能性が高いと思われ、大口取引の場合は場合によると思われます。以下に説明しますが、「流動性付加注文」の場合は変動プランのほうが大幅に有利です。

取引所手数料の仕組みとしては、基本的には「流動性除去注文(Remove Liquidity)」に手数料を課し、「流動性付加注文(Add Liquidity)」にリベートを行う(受取りが発生する)という場合が多いです。手数料とは言いながら、逆にリベートが発生する場合があるということです。
「流動性除去注文」とは、即座に約定する注文(成行の他、即座に約定する指値での指値注文)を言います。「流動性付加注文」とは、即座に約定しない注文(即座に約定しない指値注文)を言います。つまり、即座に約定する注文(市場性注文、marketable注文)にはそれなりの手数料がかかる場合が多いということです。
マーケットオープン時の約定には別の手数料を設定している取引所もあり、その場合、通常の「流動性除去注文」の手数料よりも大幅に安くなるかゼロになるところもあります。
実際の手数料体系は取引所によって異なります。
この取引所手数料の影響が大きいのは、大口の株式注文と、数量関係無くオプション注文です。

株式の場合、流動性除去注文には通常(マーケットオープン時などを除いて)、概ね1株0.003ドル前後の手数料がかかる取引所が多いです。一方でIB証券の変動プランの手数料は1株0.0035ドルで、1取引の最低手数料は0.35ドルです。さらに他の手数料も多少かかります。
固定プランの場合は1株0.005ドルで、1取引の最低手数料が1ドルです。
つまり、変動プランにおいて合計手数料が1ドル未満になる小口取引であれば変動プランのほうが有利です。それ以外であれば、流動性除去注文は固定プランが有利な傾向、流動性付加注文は変動プランが有利です。

オプション注文はIB証券の最低取引手数料は1ドルですが、取引所手数料は流動性除去注文に対して1枚0.4~0.5ドル程度かかることが多い(Penny Pilot銘柄の場合※)ため、影響が大きいです。
※Penny Pilotとは、通常より細かい値幅での注文を可能とするプログラムで、一定の銘柄が加入しており、オプション価格が3ドル以上は0.05ドル、3ドル未満は0.01ドルでの注文値幅となります。実際に表示されているBid/Ask値を確認すれば、それがPennyPilot銘柄なのか判断できると思われます。
逆に流動性付加注文には0.3~0.4ドルのリベートが発生する取引所も多いです。

取引所手数料が多く課されることを避けるには、
・即座に約定される市場性注文を出来るだけ避ける
・マーケットオープン時での約定を狙う(マーケットオープン前に注文を出しておく)
といったことが考えられます。

ただしオプション銘柄は通常マーケットオープン時にはスプレッドが大きく開いているので、マーケットオープン時での成行注文は避けた方が良いです。

取引所手数料は、注文の約定可能性と関係しているので、単純に取引所手数料の徴収が少ないまたはリベートがあるから良いとは言えません。つまり仮に取引所手数料が多く掛かったとしても、それは実勢価格が「約定価格+取引所手数料」であったと解釈できます。つまり取引所手数料は、銘柄の1ティック(最小値幅)未満で変動する隠れた価格です。市場動向によって、安い取引所手数料の取引所が最良気配値を提示していたり、そうで無かったりします。そのため基本的には、その時にかかる取引所手数料は市場動向を反映したものだと思います。
ただし非市場性注文のほうが市場性注文よりも有利な価格(取引所手数料を考慮した合計価格)で約定しやすいことは変わらない気がします。

取引所によって手数料体系が異なることは前述しました。どの取引所で約定されるか分からないため、実際に手数料がどうなるかが分からないという点があります。
しかしIB証券では、これら取引所手数料も考慮した上で最良の約定結果となるよう注文が発注されるシステムを採用しています。このシステムをスマートルーティング(Smart Routing)と言います。注文の発注先にSMARTを選ぶとスマートルーティングとなります。

次に、即座に約定しない指値注文について見てみます。これについてもリベート額は取引所によって異なります。ゼロの場合もあります。出来るだけ多くのリベートを受け取りたい場合、取引所を直接指定するよりもIB証券のスマートルーティング機能に追加設定が用意されており、それを使用できます。
TWSの設定にて、「注文」→「SMARTルーティング」の画面を開き、そこで注文の際に選択できるSMARTの種類を追加することができます。標準のスマートルーティング以外にリベートを重視したプログラムまたは約定可能性を重視したプログラムの追加が行えます。注文エントリーや注文チケットにて選択できる「発注先」のリストに、ここで選択したSMARTが追加されます。ここで追加的に選択できるSMARTは、市場性注文には適用されず、非市場性注文のみに適用されます。
株式とオプションで別々の設定を行うようになっています。選択できるものは以下です。
・Maximize Rebate
・Prefer Rebate
・Prefer Fill
・Maximize Fill
前者であるほどリベート額を重視したプログラムとなります。
リベートを重視するほど約定可能性は低くなります。分かりやすく言うと、例えば買い注文の場合、リベートの額だけ指値価格からマイナスの指値価格になるのと似たようなことのように思われます。
とすると、このリベート設定によって、1ティック(最小値幅)未満の間での指値を少し自分でコントロールできると言ったものなのかもしれません。オプション銘柄のリベート額は、1ティックのおよそ4割弱です。

こちらの指値価格が、即座に約定する市場性注文になるかならないか分からない時があると思います。出来るだけ市場性注文にはしたくない(出来るだけ流動性付加注文にしたい)が、出来るだけ早い約定も狙いたいという場合は、現在の最良気配値に1ティック分だけこちらに有利な価格での指値を行うことが考えられます。スプレッドが最小の場合は、こちらの注文と同じ側の最良気配値(買注文ならBid)が指値価格となります。この場合、市場価格が少しでもこちらの注文が約定される方向に動けば流動性付加注文として約定されます。
この時、リアルタイムマーケットデータやスナップショットデータを参照しながら手動で指値を指定するのも出来ますが、注文間際に市場価格が動いてこちらの注文が市場性注文となるリスクがあります。これを回避するには「Snap to Market」「Snap to Midpoint」「Snap to Primary」注文が有効だと思います。「Snap to」注文は、特定の参照価格に対して一定のオフセット値のところに指値価格を置く指値注文です。Marketなら最良気配値(こちらが成行注文の場合に約定される価格で、買注文ならAsk)を参照価格とし、Midpointなら仲値、Primayならこちらの注文と同じ側の最良気配値(買注文ならBid)を参照価格とします。
Snap to Marketはプラスのオフセット値(OFS)を設定することで、現在の最良気配値よりもオフセット値だけこちらに有利な価格での指値をするため、即座に約定することが無くなります。スプレッドが最小値幅しか開いていない銘柄であれば、Snap to Marketをオフセット値1ティック(最小値幅)に設定する以外にもSnap to Primaryをオフセット値0で設定することも同様のこととなり、これらの場合はこちらの注文と同じ側の最良気配値が指値価格となります。スプレッドが開いている銘柄であればSnap to Midpointも使えます。これはスプレッドが最小の銘柄に使うと市場性注文になり得るので注意が必要です(実際に試した結果です)。
注意点としてオプション銘柄の場合、通常はスプレッドが狭い銘柄でも、市場のオープン時はスプレッドが開く傾向にあるようです。そういう時は「Snap to Market」にオフセット値1ティックを指定する方法などは避けた方が良いと思われます。安全なのは「Snap to Primary」ですが、これも市場のオープン時に発注されると、適正価格から遠く離れた価格に指値が置かれることがあります。そのため、Snap to注文を市場のオープン前から発注する場合は、注文チケットから時間指定を入れて市場のオープンから数分程度後に発注されるようにしたほうが良いと思います。
Snap to注文は注文方法指定タブでは「SNAP MKT」「SNAP MID」「SNAP PRIM」という略称になっています。これらが注文方法指定タブでグレーアウトしている場合は、TWSの設定→機能→注文管理 から有効に出来ます。
IB証券の注文方法の解説記事はこちらです。
IB証券の注文方法 (TWSの使い方)

手数料に関する具体的な数値についてはIBのウェブページを参照して下さい。
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=2763

2019年10月 5日 (土)

インデックス投資の解説

インデックス投資の基本を解説する記事です。初心者向けにあまり細かい説明は省き、要点をまとめる記事としました。ただし、コストの説明については細かく記載しています。

目次
はじめに
インデックスファンドとは
投資先の分散
運用コスト
インデックスファンドとETFの違い
ポートフォリオの組成
債券について
海外債券について
為替リスク
為替ヘッジの方法

はじめに

インデックス投資は、インデックスファンドやETF(上場投資信託)を用いた資産運用です。ほったらかしで運用でき、かつ経験や知識をそれほど必要としないため、投資初心者や、投資初心者で無くても日々の中で投資に時間を費やせない、費やしたくないという人にとって適した運用方法です。
逆に、投資への熱意があり、投資に時間をかけられる場合であればFXや株式個別銘柄の短期売買に挑戦してみるのも良いと思います。これらの投資方法は高リスクであると思われるかもしれませんが、リスク管理を真面目に行っていれば寧ろそれほどのリスクは無いと思います(私は実践していないので経験からの言葉ではありませんが)。

インデックス投資の一番の利点は、「手間をかけない投資」であることです。短期売買で可能性があるような高い利益率は狙えませんが、独自の優位性によりリスクを抑えつつリターンを高めた運用が可能です。
インデックス投資は投資先を分散することでリスクを抑えます。また、株式市場という長期的には右肩上がりになる可能性の非常に高い資産を投資対象とします。これらの点においてインデックス投資の優位性があります。株式個別銘柄の場合はいくつかの銘柄に集中投資になるためリスクが高く、それらの銘柄の将来は保証されてはいません。会社一つ一つは倒産する可能性があります。それに対してインデックス投資で投資する対象は株式市場全体であり、株式市場全体の価値がゼロになるという可能性はあまり考えづらいです。いくつかの企業は淘汰され、入れ替わりが起こっても、株式市場全体は長期的には成長していく可能性が非常に高いです。FXに関しては通貨ペアを取引対象としますが、通貨そのものは価値がゼロになる可能性は非常に低いです。しかし株式と違い、長期的に成長していくことはありません。それは利益を生まないからです。そのため長期保有には基本的には適しません。株式個別銘柄やFXによる投資は、インデックス投資とはまた違った優位性があります。

インデックス投資には知識をそれほど必要としないとは言え、投資に臨むに当たり一定の知識は必要です。それはこの記事でも解説しますが、本などで知識を取り入れるのも有効です。本でも玉石混交です。投資への理解度が低い著者の書いたものも多いと思います。プロと言われる人でも私から見て、合理性の欠ける見解を持っていたり、素人のような人たちが多く存在します。
しかし、それが上記したような意味での良い本か分からなくとも読んでみる事に意味があります。読んでいくうちに様々な見解を知る事が出来る上、疑問に思う点も明確になってくるからです。様々な考え方を知る事が出来るのは、自分なりに考え、自分なりの見解を持つために役立ちます。

その上でですが、私のお薦めは山崎元さんの著作です。インターネット上でも参考になるコラムが掲載されています。

ダイアモンドオンライン;山崎元のマネー経済の歩き方「http://diamond.jp/category/s-yamazaki_econo
楽天証券;山崎元 ホンネの投資教室「https://media.rakuten-sec.net/category/yamazaki

利用する証券会社についてはインターネットの証券会社(ネット証券)を勧めます。手数料が安く、取り扱い商品が豊富だからです。大手の店舗型の証券会社は個人投資家にとって基本的に利用価値が無くなっています。店頭で相談できるということはありますが、親身で有用なアドバイスをもらえる可能性は低いため、いずれにせよ自らある程度の勉強をすることが投資をする上では必要となります。
ネット証券はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、GMOクリック証券などがあります。マネックス証券以外は、それぞれが提携するネット銀行と連携できる機能があり利便性が高いです。マネックス証券は米国株に力を入れており、また、レポートや動画による情報提供、ストラテジストによる質問受付など顧客サポートが充実しています。
SBI証券と楽天証券は大手であり総合的なサービスが特徴、GMOクリック証券はCFDやバイナリーオプション、2種類のFX、ソーシャルレンディングなど先進的なサービスを展開しています。GMOクリック証券は米国株の取引はできないようです(CFDという形であれば可能)。

インデックスファンドとは

インデックスとは指数のことで、インデックスファンドとは指数に連動するファンド(投資信託)のことです。指数には様々ありますが、代表的なのは日経平均株価、TOPIX、S&P500などです。これらは一定の株式銘柄の集まりから成る価格を表しています。日経平均株価は日本の代表的な企業225社の株価平均を表しています。TOPIXはより広い範囲の企業をカバーしています。S&P500はアメリカの代表的な企業500社から成る価格指数です。これらの指数に連動するファンドは、これらの指数がカバーする企業全体に投資しています。一定の市場の平均価値に連動するファンドと言えます。このようにして投資先の企業を分散し、一定の株式市場全体に投資するようにしてリスクを抑えます。インデックスファンドはパッシブファンドとも呼ばれます。

投資信託にはインデックスファンドとアクティブファンドがあります。個別銘柄を選別する事によりインデックス(市場平均)を上回るリターンを目指す投資手法の事をアクティブ運用(積極型運用)と言います。
対して、インデックスファンドのようにインデックス(市場平均)に追従するだけの手法をパッシブ運用(受動型運用)またはインデックス運用と言います。

アクティブファンドはインデックスを上回る成績を狙うとは言え、インデックスファンドの成績(市場平均)を実際に上回れるのかというと、必ずしもそうではありません。
アクティブファンドであっても複数の銘柄に分散はしますが、インデックスファンドのように完全な分散は行わないため、どうしてもリスクは高まります。
また、アクティブ運用型のファンドの平均はインデックスに負けている、という事実があります。
アクティブ運用型のファンドは手数料が高いため、その分は確実にリターンを押し下げます。
インデックスを上回れそうなアクティブファンドを事前に見つけられるかどうか、または自分でそのような投資ができるかどうかが焦点となります。

何故、プロが運用するはずのアクティブファンドが市場平均に負けているのでしょうか。これはプロでも市場平均に勝つことは難しいという点があります。
しかしアクティブ運用のファンドが皆、プロの運用なのかというと、私はこれに疑問があります。
証券会社で売られている投資信託を見ていると、単なる手数料稼ぎのためのファンドがほとんどで、まともな運用を目指しているものは少ないと感じます。
例えば、宣伝となるキャッチコピーを打ち出して、あたかも良さそうに見せかける事で集客を図るファンドなどです。
そして流行に応じてキャッチコピーを変えながら新しいファンドを次から次へと売り出していく、という手法が見られます。
このようなケース以外にも、投資信託の運用業務は顧客のいる商売である事を考えれば、すぐに成果が求められるので長期的な視野に立った運用がしにくい、顧客からのイメージが悪くなる手法は取りにくいといった制約がある場合も想定できます。

まともなアクティブ運用を目指しているファンドであれば、そもそも他より優れた運用をする自信が無ければファンドを立ち上げません。
アクティブ運用の平均はインデックスに負けているのですから、他より優れた運用をする自信が無ければ、投資のプロと言えども顧客にはインデックス運用を勧めるのが良心的です。
優れたアクティブファンドを探す際には、そのあたりの納得の行く説明をしている、もしくは独自の投資哲学を持っているものを候補にする事が良いと思います。
だからと言って優れたファンドかどうかは分かりませんが、少なくとも本気度の低いファンドを取り除く役には立つと思います。
アクティブファンドに投資してみるのも十分選択肢になると思いますが、インデックス投資ではインデックスファンドを主体として運用します。

また、ETF(上場投資信託)というものがあります。ETFとは、取引所に上場され、一般の株式と同じように取引が出来る形となった投資信託です。どちらでもインデックス運用に使えますが、細かい違いがあります。

投資先の分散

インデックス投資では投資先の分散を行うことでリスクを分散、軽減させます。そこで「相関性」という考え方があります。値動きの似た物同士に投資しても、あまりリスクの分散にはならないため、出来るだけ相関性の低い資産を組み合わせて投資を行うことで、リスクの分散が図られるという考え方です。これは現代ポートフォリオ理論とも言います。
インデックス投資ではそのために、株式、債券、商品(コモディティ)を組み合わせるのが一般的です。株式は最も高いリターンを狙える資産ですが、下落リスクも高いです。債券は株式が下落した際に上昇しやすいという特徴を持ちます。商品(コモディティ)について特に貴金属が候補となり、これも株式とは逆相関に動くことが多いです。
ただし、相関性の低さだけでは投資先の資産を決定することは出来ません。投資先の資産の「割安性」も大事になります。投資の基本は安く買って高く売ることであり、それを考えると高い資産にはなるべく投資することは控えるべきです。
株式、債券、商品(コモディティ)それぞれに投資するインデックスファンドやETFがあります。
さらに株式については「地域の分散」を行います。日本株式、米国株式、ヨーロッパ株式などに分散して投資を行うのが基本となります。債券に関しては外国債券に投資することのデメリットも大きいため、一概に日本以外に投資することが勧められる訳ではありません。→為替リスク
地域の分散を行うとは言え、株式や債券などの資産は世界的に繋がっており、国ごとの相関性は高いです。それでも国固有のリスクを軽減するためにも、地域の分散は重要になります。

時間の分散を行うことも有効です。これは、一つのタイミングで一気に投資を行うのではなく、複数回に分けて資金を投じていくということです。今が底値だと分かれば一気に投資が出来るのですが、誰も今が底値だと分からないため少しずつ投資していくのがリスク軽減となります。

運用コスト

インデックス運用で大事なのは手数料、つまり運用コストです。インデックスファンドやETFは基本的にはアクティブファンドよりも運用コストが安いのですが、その中でもコストに差があります。
投資信託にかかるコストは次の3点です。
「売買手数料」「運用コスト」「信託財産留保額」
売買手数料に関しては、殆どのネット証券では「ノーロード」と言い、インデックスファンドに関しては無料となっています。
大きいコストは「運用コスト」で、これは投資信託の保有時に継続的にかかります。この「運用コスト」が最も低いファンドを選ぶことが重要です。コストが安いからといってインデックスファンドの場合は運用成績が劣るといったことは基本的にはありません。しかし、ファンドによってはトラッキング・エラーといって参照する指数からファンドの価格が乖離する幅が大きくなることがあります。しかし一般に知られたファンドであればあまり気にしなくても良いと思います。
「信託財産留保額」は、投資信託を解約した時にかかる手数料ですが、これを設定しているインデックスファンドは少なくなっています。
ETFの場合は、売買手数料と運用コストがかかります。売買手数料は株式の売買手数料と同じです。NISA口座であれば無料となります。

運用コストの見方について解説します。運用コストの主なものは「信託報酬」で、これは投資信託やETFの目論見書などに記載があります。しかし、特に投資信託については信託報酬以外の費用もそれなりにかかることがあります。投資信託については「運用報告書」で実際にかかった費用の明細を知ることができます。「一万口あたりの費用明細」などと書かれている項目に明細が記載されています。ここに「比率」が書いてあります。この明細の計算期間が1年ならばその比率がそのまま運用コストになりますが、計算期間が半年などの場合は、1年に換算します。国内ETFも運用報告書で調べることができますが、少し難しそうです。米国ETFの場合は、記載の運用コスト(Expense Ratio)がほぼ運用コスト全体であると思われます。

注意点として、投資信託にはファンドオブファンズと言って、投資信託の投資対象が更に別の投資信託かETFとなっている場合があります。この場合、信託報酬は二重にかかるのですが、投資信託の手数料の説明には投資先の信託報酬分は書かれていない場合があります。これを判断するには投資信託の投資先に別の投資信託かETFがあるかをチェックする必要があります。「マザーファンド」を通して投資するという説明は良く見かけますが、これは違う意味です。参考として以下のウェブサイトを挙げます。
http://noload.558110.info/
こちらでは投資信託の詳しい情報が載っています。ファンドオブファンズの情報も確認できるので、実質的なコストが分かります。
また、それ以外にもファンドオブファンズの不利な点があります。米国外の株式に投資するファンドオブファンズが米国ETFを介する場合、米国での課税が発生するため、分配金の10%程度のコストが余計にかかります。詳しくは→海外ETFと国内預託証券(JDR)にかかる分配金課税について

低コストのインデックスファンドとしては「eMaxis Slim」「ニッセイ <購入・換金手数料なし>」シリーズなどが有名です。国内株式、外国株式(先進国株式)、新興国株式など、投資先ごとに分かれており、基本的な資産にはこれらのインデックスファンドを用いて投資が行えます。また、全世界の株式に一括して投資を行えるものもあります。

インデックスファンドとETFの違い

インデックスファンドとETF、どちらで運用するのが良いかという問題があります。どちらを選ぶにせよ、低コストで運用できるものを選ぶことが大事です。インデックスファンドとETFの違いを見ていきます。

信託報酬

信託報酬はETFのほうが低い傾向にありますが、最近ではあまり差が無くなってきています。

売買手数料

ETFの場合は株式と同じ売買手数料がかかりますが、NISA口座では無料であることが普通です。

約定のタイミング

ETFは取引所に上場しているため、取引所が開いている時間帯であればリアルタイム取引が出来ます。投資信託(インデックスファンド)は約定するタイミングが決まっています。国内資産であれば取引所が終わるまでの注文であれば、その日の終値で約定しますが、海外資産であれば、当日の東京証券取引所の終わり(大引け,15:00)までの注文であれば、その後に開かれる当概資産の上場する海外取引所での終値で約定します。
参考URL 楽天証券の該当ページ
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/guide/timing.html

約定価格

ETFは指値を行えるため、これ以上の価格では購入しないといった注文が可能です。それに対し投資信託(インデックスファンド)は約定価格が分かりません。

ETFは純資産価格(NAV)と市場価格に乖離が発生する

ETFは純資産価格(NAV)と市場価格の間に乖離が発生します。つまり、ETF本来の価値と市場価格の間で乖離が発生します。ETFの流動性が低いほど乖離は大きくなるため、ETFを選ぶ際は出来るだけ流動性の高いものを選ぶ必要があります。→ETFにおける市場価格との乖離について
国内ETFでは流動性の高い銘柄は限られるため、海外ETFのほうが有用である場合も多いです。

 

分配金の扱い

分配金(配当)とは、株式においては企業が出す利益の一部を投資家に配分するものです。分配金として配分しない利益は、企業の内部で内部留保として留まり、主に企業の成長や新たな利益獲得のための事業資金として留保されます。
投資信託は分配金を出すものと出さないものがあります。出さないものは、分配金を投資信託の内部で再投資しています。低コストの優良なインデックスファンドであれば出さないものが多いです。分配金を出すとその分に課税されるため、投資家が自ら分配金を再投資する際に、再投資分が目減りするという点があります。分配金を出さない投資信託の場合はその課税を先送りにします。分配金を出す投資信託の場合でも、分配金を自動で再投資してくれるシステムが利用できますが、課税はされます。
ETFの場合、株式や債券に投資するタイプでは、必ず分配金を出します。自動再投資が出来ないため、手動で再投資を行う必要があります。その際には売買手数料がかかる(NISA口座以外)など、投資信託の再投資よりも不便な面があります。
NISA口座であれば、投資信託、ETFどちらの分配金にも原則として課税されません。例外として外国資産に投資するETFで株式数比例配分方式の対象外であるものは、分配金に対してNISA口座であっても課税されます。

複利の力を最大限に生かすためには、株式が出した分配金を再投資する必要があり、かつ分配金への課税が無い方が良いと言われます。複利とは、投資元本から発生する利益を再投資し続けることによって、雪だるま式に投資資金を増やしていくことができるという理論です。確かに投資対象資産が右肩上がり(価格の上昇が続いている)状態であればその通りなのですが、下落する場合においては下落幅は大きくなります。分配金の再投資によって投資総額を増やしているのですから、下落リスクも高まります。株式が下落する場合においては、分配金を再投資せずに取っておいて、株式資産が一定以上に下落した際に追加投資をしたほうが安く買えるため有利となります。しかし株式が下落するかは誰にも分からないという点もあります。
株式というのは常に利益を生み出し続けている資産であるため、長期的には右肩上がりになることが期待できる資産です。そのため出来るだけ早めに再投資を行うことで、資金を無駄にせず複利効果を生かせる可能性が高くなります。

外国株式に投資する投資信託またはETFの場合、その分配金については通常は外国での課税も受けます。米国資産の場合は、軽減税率が適用されるため10%となります。これは分配金のみへの課税で譲渡益への課税はありません。この外国での課税の一部を日本での課税額から控除できる制度として「外国税額控除」というものがあるのですが、この適用を受けるのは分配金が出される投資信託またはETFのみです(投資信託については2020年度から外国税額控除が適用)。外国税額控除によりどの程度の控除があるかは人によりますので一概に言えません。

海外ETFやJDRを用いる際は、現地での源泉徴収課税が高くなる場合があるため気を付ける必要があります。→海外ETFと国内預託証券(JDR)にかかる分配金課税について

現時点での結論

ETFとインデックスファンドで細かい違いはありますが、まずは信託報酬を比べること、そしてETFの場合は流動性の高いもののみに絞ることをポイントとして抑えれば、後はあまり大きな問題では無いようにも思います。基本的には、「eMaxis Slim」や「ニッセイ <購入・換金手数料なし>」シリーズなどの低コストのインデックスファンドを中心に運用するのが、分配金の再投資の手間もかからずに良いと思います。それらで補えないもの、扱いの無い資産についてETFを利用するという形になるかと思います。こだわるなら、外国税額控除について調べてみるのも良いと思います。

ポートフォリオの組成

ポートフォリオとは、投資資産の内訳や配分比率を表したものです。このポートフォリオをどのように組むかということについて解説します。
投資資金は、生活資金とは別の余剰資金を用います。この余剰資金を用いた投資資金の中で、投資先の内訳を考えます。
インデックス投資では相関性の低いもの同士を組み合わせることで、全体のリスクを抑えます。インデックス投資の中心を担うのは株式(国内外)、債券、貴金属(主に金)です。債券と貴金属は、株式のリスクを抑えるために入れられる資産です。
このあたりの配分をどうするかは、個人の状況や、現在の資産の市場価格によります。

2019年現在では、債券の価格は世界的に高水準であることから、債券への投資は抑えた方が良いと思われます。債券は市場金利が高くなれば価格が下落し、市場金利が低くなれば価格が上昇します。債券の満期が長期であるほどその価格変動が大きくなります。
そのため、国内外の株式への投資を中心に、貴金属を入れ、残りは現金または短期債券で保有するという形が良いと思われます。短期債券は性質としては現金に近く、価格変動リスクが少ないため安心して投資できますが、マイナス金利下では現金のほうが良いと思われます。
債券とは、基本的には国債のことを指します。社債についても信用力の高いものであれば国債に準じる値動きをしますので一定程度は入れることが出来ます。ただし、信用力の低い社債(ハイイールド債など)は逆に株式の値動きに近くなるため、株式のリスクヘッジ(リスク軽減)目的でポートフォリオに入れることは出来ません。

貴金属については主に「金」が投資対象となります。金は安全資産と言われ、景気が悪化した際や株価が下落した際に価格が上がり易い資産です。ただし、金の市場価格が割高であればあまり多くは投資しない方が良いと思います。様子を見ながら少しずつ購入するのが安全です。
金への資金配分割合ですが、金そのものは株式と違って利益を生みませんので、長期的には株式のパフォーマンスに大きく劣後することが予想されます。そのため、一般的には投資資金の10%程度を目安とするのが良いと言われます。私もその程度が良いと思います。ただし価格水準が安ければ、20%に増やしたりするのも良いと思います。金以外には銀やプラチナがあり、価格水準にもよりますがこれらを分散して買うことも良いと思います。
貴金属投資の具体的な方法については→低コストの貴金属投資を考察(金・銀・プラチナ)

株式の場合、世界の株式市場に分散投資することが基本となります。世界的に値動きの相関性は高いのですが、それでも国固有のリスクを抑えるためにも分散投資を行います。
インデックスファンドやETFは時価総額比率によって資産配分を決定している場合が多いです。例えば「外国株式インデックスファンド」という名称のものの場合、日本を除いた先進国全体に投資しますがその中の60%前後はアメリカへの投資となり、残りはヨーロッパ、カナダ、オーストラリア等となります。時価総額比率で配分した場合、日本市場は世界のうちの10%に満たないのですが、日本株式にどの程度投資するかは任意です。新興国への投資も行うことが出来ます。新興国株式に投資するインデックスファンドやETFは、基本的に中国への投資比率が高く、更に新興国と呼べるかどうか分からない台湾と韓国の比重も大きく、これら3国で60%程度を占めます。インドや東南アジア諸国など本当の新興国と呼べる国々の割合が少ないのですが、現状では良い投資信託がありません。
投資配分の例ですが、日本株式2、外国株式(先進国株式)4、新興国株式1 と言った感じで組みます。全世界に一本で投資する投資信託もあります。

投資資金は全額株式に投資することも可能ですが、リスクが大きくなります。長期的な運用が前提であればそれでも最終的には利益を得られる可能性が高いのですが、より安全に運用するのであれば株式への投資比率は抑える必要があります。ただし、積立NISAやiDeCoを利用した積立投資の場合は、少額ずつ時間的な分散を効かせながらの投資となり、かつ税制の優遇もあるため、全額株式で投資しても構わないと思います。
しかし基本的には株式とその他防衛資産(現金や債券、金)を分けて保有することを勧めます。この比率についても個人によるのですが、例えば株式:防衛資産を1 : 1とします。

2右の図は、ポートフォリオの資産配分の例を示したものです。実際の資産配分は、個々人のリスク許容度によって決めます。
債券については、前述した通り2019年現在では投資する魅力が無いため、現金で代用するのが良いと思われます。

防衛資産を保有することにより、リスクを抑えることが出来ますし、株式資産が下落した際には防衛資産を用いて株式の追加投資を行うことが出来ます。現金や債券を一定量保有する最大のメリットは、株式の下落時に、割安となった株式を買うことができる点です。
投資の基本は安く買って高く売ることです。しかし、今がどの程度の水準の価格なのかは、極端な場面を除いて分からない場合が多いです。そのために、通常は株式を例えば5割保有し、株式の下落時には株式資産の保有を少しずつ増やすという手法が有効です。常に投資する資金と、追加投資のための資金に分けるということです。注意点として、株価の下落時にすぐに追加投資を行ってしまうとリスクを高めてしまいます。そのため例えば株式資産が高値から30%以上下落した場合にのみ、その地点から下落するに連れて少しずつ追加投資を行っていくといった方法があります(以前は10%以上の下落から追加投資するのが良いかと考えていましたが、リスクが高いため考えを改める必要があると思いました)。一度に大きな額を追加投資してはいけません。追加投資分は、下落した株価が元の水準に戻った際に売却し、ポートフォリオ内での当初の資産配分に戻します。

より保守的な運用をするのであれば、当初の資産配分比率を崩さないという方法もあります。もっとも、資産の価格が変動するに伴い、ポートフォリオ内の資産比率も自然と変わってきます。これを元の比率に戻す際には、自然と「安く買って高く売る」ということがなされます。元の資産比率に戻すために上昇した資産は売られ、下落した資産は買われるからです。これを「リバランス」と言います。
リバランスの行う頻度はあまり多く無いほうが効果的です。資産価格が一定以上変動した時、または年一回と決めた時期に行うといった方法があります。

債券について

債券の価格に影響を与えるのは市場の金利動向です。市場の金利水準が上昇すれば債券価格は下がり、金利水準が下落すれば債券価格は上がります。そして、そのような金利変化が債券価格にどの程度の影響を与えるかは、その債権の満期日までの残存期間によります。
満期日までが短い債券(短期債券)は市場金利の動向に影響を受けにくく、満期日までが長い債券(長期債券)は市場金利の動向に影響を受けやすくなります。つまり、短期債券のほうが価格変動リスク(ボラティリティ)は少なくなります。
金利変動によってどの程度債券価格が変動するかを表す指標があり、これを「デュレーション」と言い、満期までの残存期間を加重平均したものとなります。「金利の変化幅(%)×デュレーション」が、債券価格の変化率となります。
また、市場金利や債券価格というのは世界的に連動しています。

株式が下落すると、金利も下落するのが通常で、その際は債券価格が上昇します。短期債券のほうが価格変動リスク(ボラティリティ)は低いのですが、株式のリスクヘッジとしてより機能しやすいのは価格変動の大きい長期債券です。
しかし長期的な視野に立ってみると、株式との逆相関という要素だけで長期債券を保有するのが良いとは一概に言えず、もう一つ重要な要素は資産の割安性です。2019年現在では市場金利の水準が世界的に低く、債券価格が高値にある状態です。これは特に長期債券に言えることとなります。そのため、いくら株式との逆相関が強いとは言え、長期的な視野で見ると高値にある資産は買いづらいということが言えると思います。

債券は基本的には国債(国が発行する債券)のことを指します。国債は信用力が一番高い債券です。社債は企業が発行する債券となり、信用力は国債よりも落ちます。その分金利が高いのが通常です。国債の金利水準はリスクフリーレートとも呼ばれ、無リスクでの金利水準を表す指標となります。国債よりも信用力が落ちる社債は、このリスクフリーレートに上乗せ金利を乗せた利率で発行されます。この上乗せ金利部分をイールドスプレッドと呼び、より一般的にはリスクプレミアムとも呼びます。信用力が低いほど、イールドスプレッドまたはリスクプレミアムが大きくなります。この上乗せ金利部分は、投資家がリスクを引き受けることに対しての見返りと言えます。
リスクプレミアムの概念は株式にも共通します。株式の現在の利回りが、国債の金利よりもどの程度高いかをリスクプレミアムという言葉で表現します。
イールド・スプレッドやリスクプレミアムは、市況の変化によって変わります。景気が悪化したり株価が下落している時はこれらの価値が大きくなります。つまり、それだけ資産の信用力が落ち、リスクが高まっているということが市場参加者の合意となるということです。リスクプレミアムが高まるほど、国債に対する当該資産の利回りは上昇し、割安性が増します。

国債は株式と逆相関が強いですが、信用力が落ちる債券になるほど逆相関が弱まります。リスクの高い債券であれば景気にも敏感となるため、株式と同じように動く傾向が強くなります。それを考慮してポートフォリオを組む必要があります。

海外債券について

海外債券は日本債券と比べて金利が高いため、海外債券に魅力を感じる人も多いと思います。実際に証券会社や銀行の商品でも、海外債券のインカム(金利収入)狙いで投資を行う投資信託が多数設定されています。
しかし注意が必要なのは、その国の金利というのはインフレ率に連動する傾向が強いということです。金利というのはインフレを抑えるために設定するからであり、長期的にはその国の金利水準とインフレ水準は一致する傾向が強いです。短期的には一致しない場合も多いです。
インフレがあるということは、その通貨の価値がそれだけ目減りしていくということであり、これは為替にも影響を与えます。つまり、インフレによって通貨の価値が減少していくだけ、為替レートにも通貨安の圧力がかかります。しかしこれも長期で見た限りであり、短・中期的にはむしろ逆のことが起こる場合もあります。
そのため、何も考えずに高金利の海外債券に投資したとしても、長期的には当該国の通貨安によって、得られた金利分が相殺されてしまう可能性を考慮すべきです。債券投資をする際は、表面利回りからインフレ率を引いた実質利回りを見ることが大事だと思います。

為替リスク

外国資産に投資する場合、為替リスクがあります。投資をする上ではなるべくリスクを抑えることが重要なので、為替リスクというのはその観点から見ればなるべく無い方が良いと捉えられます。為替リスクは「為替ヘッジ」によって抑えることが可能です。為替ヘッジというのは外国通貨を売り、日本円を買う取引のことを指します。海外資産を持ちながら、通貨は持たないということになります。
一方で為替ヘッジを行う場合、為替リスクを抑えることが出来る代わりに、外国通貨を持たないことになるため、通貨の分散効果が働きません。日本円に集中投資していることになります。
インデックス投資では投資先の分散を重要視しますから、その意味では為替ヘッジを行わず、外国通貨を保有する方が良いと捉えられます。
為替リスクは外国資産の価格変動リスクを高める一方で、日本の通貨価値が下がった時のためのリスクヘッジ(リスク回避)になります。

通常であれば、世界的に株価が下落した際には日本円は上昇します(円高になります)。為替ヘッジをしていなければ海外資産は悉く下落し、海外の株式資産であれば円高との相乗効果で下落幅が大きくなります。逆に世界的に株価が上昇した際は円安との相乗効果で上昇幅が大きくなります。このように為替ヘッジが無い場合は通常であれば海外資産の価格変動リスク(ボラティリティ)は増大します。
しかし、将来的に万が一日本固有の問題が起こった際は、株安となると同時に円安となることも十分に考えられます。円安になれば、海外通貨は上昇します。そのような事態に備えて一定の海外通貨を保有することは意味があることだと思います。
これらを踏まえて、海外資産に為替ヘッジを行うかどうか、行うとしたら何割程度行うのかという点は個人の裁量となります。

海外の通貨を保有する場合、どのような形で保有するかということについて解説します。
基本的には株式の形で保有することが良いと私は思っています。
現金(預金)や債券という形で海外通貨を保有する場合、確かに株式由来のリスクはありませんが、利益もほとんど生みません。
通常であれば世界的に株安の際は円高となるため、海外通貨は株式と揃って下落します。そのため、海外の現金や債券の保有は、株式のリスクヘッジにもなりません。債券であれば株式と逆相関の値動きをする傾向があるものの、為替変動によって相殺されます。
このような時、株式であれば更に下落率が高まることになりますが、株式は長期的には利益を生む可能性が非常に高い資産です。
そして海外通貨の保有の目的は、将来的に日本に何らかの問題が訪れた際のためのリスクヘッジです。そのため、通常時であれば何の役にも立ちません。
いつ来るか分からない問題に備えるために、利益を殆ど生まない債券などに投資するよりは、株式に投資しておくほうがずっと有利なのではないかという考えです。ただし、金利が高い時など債券が利益を生む局面もあるため、海外債券を一概に否定する訳ではありません。

為替ヘッジの方法

為替ヘッジを行う場合はFXを利用します。為替ヘッジ付きの投資信託もありますが、数は少ないです。
FXにて、海外資産の通貨を海外資産の額だけ売り、日本円を買います。米国資産を為替ヘッジするならばUSD/JPYを売ります。注意点としては、為替によらない元々の資産価格の変動があった場合、為替ヘッジは不完全になるか、過剰になります。とは言え、その価格変動が極端で無ければあまり気にするほどのことでも無いと思います。
また、為替ヘッジには金利コストがかかるか、受け取りが発生します。日本円に対して海外通貨をヘッジする取引であれば通常は金利コストがかかります。
原則としては「海外通貨の短期金利 - 日本の短期金利」がコストとしてかかります。そのため、高金利の新興国通貨などに対し為替ヘッジを行うと、継続的に大きいコストがかかることになります。仮にインフレ率が高い通貨であっても為替が通貨安になるとは限らず、しかし金利コストは確実にかかります。しかし高金利国の株式は、金利水準と併せて配当金額も高いことが多く、それによって相殺できることも多いです。ただし、新興国通貨はFX会社で取り扱いが無いケースも多く、有ったとしてもFX会社が独自に設定する金利レートが高い場合も多いため為替ヘッジが行いにくいことは確かです。

FX会社では金利水準が各社異なります。基準となる金利(参照する金利)は同じなのですが、提示する金利水準は違っています。FXで発生する金利をスワップポイントと言い、日々加減されます。為替ヘッジに利用するためにはこのスワップポイントのマイナス幅がなるべく少ない会社を用います。
FX会社には、スワップポイントに対して上乗せレートを手数料として設定しているところと設定していないところがあります。設定しているところは、マイナススワップ(金利がかかる)が多く、プラススワップ(金利が受け取れる)が少なくなります。手数料が無いところは、マイナススワップとプラススワップで、±を除いた絶対値が同じ値となります。
傾向としては、売りと買いで絶対値が同じか差が少ないFX会社を利用することで、長期的にコストを低く抑えることが出来ると思います。当該通貨の売りにかかるスワップポイントで各FX会社比を較してみてください。提示するスワップポイントの水準は時期によっても異なるので今の水準だけでは判断できないのですが、伝統的にマイナススワップが少ないFX会社が存在します。「DMM FX」「外為ジャパン」「GMOクリック証券 FX neo」「セントラル短資FX」です。また、「みんなのFX」「LIGHT FX」はスワップポイントの絶対値が同値で、先進国通貨のマイナススワップが有利かもしれません。
通貨によってもどのFX会社のスワップポイントの条件が良いのかは異なるのですが、大体の傾向としてこれらのFX会社のマイナススワップは少ない(かかる金利が少ない)傾向にあります。セントラル短資FXについては売りと買いでスワップポイントの絶対値に差があるため、長期的にはどうなるか分からないという点があります。DMM FX、外為ジャパン、GMOクリック証券FX Neoはスワップポイント差がかなり少ないです。
「DMM FX」と「外為ジャパン」は同じ会社が運営しており、スワップポイントおよびスプレッド(売値と買値の差)は同じです。違いは取引単位で、外為ジャパンは1000通貨単位、DMM FXは10000通貨単位です。外為ジャパンのほうが少額での取引ができますが、DMM FXには独自のポイント付与があります。GMOクリック証券FX Neoは10000通貨単位、セントラル短資FXは1000通貨単位です。
また、新興国通貨に関してはFX会社によって取り扱いの有無に違いがあります。これらの条件を勘案してFX会社を選びます。

2019年9月27日 (金)

IB証券の注文方法 (TWSの使い方)

2021.7更新

IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ, Interactive Brokers)における注文方法を簡単に解説する記事です。IB証券では主にTWS(トレーダー・ワークステーション)を使い注文を行います。WEBからも注文を行えますが、機能は限定されます。初めからTWSに慣れてしまった方が良いと思います。TWSはかなり複雑なので、全く機能を把握し切れないのですが、それでも私の分かる範囲で解説します。
TWSのダウンロードは以下のページから行えます。
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=15901&ns=T#tws-software
いくつかバージョンがありますが、TWS最新版で良いかと思います。安定版(Stable)(TWSと表記されているもの)もありますが、現在安定版はスナップショットデータが使えません。→Firstrade証券、およびIB証券について

TWSのログイン時にペーパートレーディング口座かライブ口座(実際の取引を行うための口座)の選択ができます。
TWSのレイアウトにはモザイクとクラシックの2種類がありますが、私は標準のモザイクを使用していますので、この記事ではモザイクレイアウトを基準にした解説をいたします。
以下がTWSのモザイクの画面です。

Tws12

左上が注文エントリーとなり、ここのフォームに銘柄名を入力しエンターを押すことで、その銘柄が選択された状態となります。
注文エントリーの下の領域には、選択された銘柄の情報やチャートが表示されます。
更に下、つまり画面全体から左下の領域には発注中の注文や約定済みの注文が表示されます。ここから既存の注文の変更等を行えます。
右上の領域には、自分のポートフォリオやウォッチリストにある銘柄の情報が表示されます。
右下の領域はニュースが表示される領域です。

最もシンプルな注文方法は、左上の注文エントリーに銘柄を入力し、そこから注文を行うことです。他のツールや画面にて銘柄を選択した場合も、この注文エントリーにその銘柄が入力されます。
注文方法について解説します。

売り/買い
・・・どちらの場合でも、保有中のポジションと両建てになる注文の場合は自動的に相殺されます(決済注文となります)。空売りが可能な銘柄で、保有するロングポジション以上の売り注文を行うと、その分が空売り注文になります。
空売り注文
・・・空売り可能銘柄の場合、銘柄入力フォームの下に緑色のマークと共に「空売り注文」という文字が表示されます。そこで空売りに関する情報が表示されます。
スナップショット
・・・スナップショットデータのリクエストが可能な銘柄の場合、同じく銘柄入力フォームの下にスナップショットという文字が表示されます。ここをクリックすれば即座にスナップショットデータがリクエストされます。
LMT/MKT
・・・数量フォームの右には注文方法選択タブがあります。 銘柄によって選択可能な注文方法は変わります。LMTはリミット(指値)注文、MKTはマーケット(成行)注文、STPはストップ(逆指値)注文です。グレーとなっていて選択できない注文方法もあるかと思いますが、それは単に設定にて無効となっているだけです。TWS右上の設定ボタン→機能→注文管理 から各種注文方法を有効に出来ます。注文方法について詳しくは→https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=6052 また、TWS上で注文方法の右のはてなマークをクリックすることでも説明が見られます。ここでいくつかの注文方法について解説します。
MidPriceやAdaptive(適応アルゴリズム)は、IB独自のアルゴリズム注文です。Adaptive(適応アルゴリズム)は、BidとAskの間で最良の約定価格を目指すもので、初めは有利な価格から注文を出し、次第に不利な価格に注文を移行していくというものです。Adaptive成行注文は最終的には一番不利な価格(買いの場合はAsk)まで移行しますが、Adaptive指値注文は、任意の指値より不利な価格には移行しません。Adaptive注文は、アドバンス設定にて優先度/緊急性の設定ができ、Urgentは素早く約定させたい時に使用し、Normalは通常速度、Patientはゆっくりと時間をかけて最良価格での約定を目指します。後者になるほど有利な価格で約定できる可能性が高いかもしれませんが、その間に銘柄の価格が不利な方へ変動して約定しない可能性も高まります。MidPriceは仲値より有利な価格での約定を目指すシステムですが、詳しい原理は複雑そうで把握できていません。
RELは、Relative注文、別名Pegged to Primary注文を指します。これもBidとAskの間で約定を目指すシステムで、こちらと同じ側の注文の最良気配値(NBBO)――例えば買い注文なら買値(Bid)――よりも常にアグレッシブな価格(Ask側に寄った価格)を提示することで約定可能性を高めるという注文方法です。市場のBid価格が上昇すれば、注文価格もそれに合わせて上昇しますが、Bid価格が下がった際は注文価格を変えません。自分と同じ注文側の最良気配値(この例ではBid)からどの程度離れた水準に注文を出すかという値幅(オフセット値または補助価格)を予め設定します。
Pegged to StockおよびPegged Volatility注文は、一定のオプションで利用できる方法です。Pegged to Stockは原資産である株式の価格に連動して指値価格を変える注文です。Pegged Volatilityは、Ask,Bid,仲値のIV(インプライドボラティリティ)に一定幅を増減したものに連動して指値を変える注文です。
SNAP...は、Snap to...注文のことを指し、MKT、MID、PRIMと種類がありますが、それぞれ「こちらの成行注文対象の最良気配値(NBBO)」、「仲値」、「こちらの成行注文対象では無い方、つまり自分と同じ注文側の最良気配値」を基準に、そこから指定した値幅(オフセット値、補助価格)のところに指値注文を置くというシステムです。RelativeやPegged注文と違い、指値注文は初めに置いたところで固定されます。これは、リアルタイムマーケットデータが見られる状況であれば自分で直接指値注文をするのとあまり変わらない気もしますが、これらの基準価格(参照価格)から確実に一定の値幅のところに指値を置きたいという場合に使えると思います。
後述しますが、注文エントリーに表示される注文方法は全てでは無いことがあり、「注文チケット」により多くの注文方法が表示される傾向があります。
DAY/GTC
・・・指値価格などを入力するフォームの右には、注文の有効期限を選択するタブがあります。DAYは当日のみ有効、GTCはキャンセルされるまで有効となります(ただし一定の期間までの制限は有り)。DAY注文が取引所が閉まった後に発注された場合、次に取引所が開かれる日の終わりまで有効となります。またここで、時間外取引を可能にする設定が行えます。「通常取引時間外にて約定する」は、時間外取引を通常取引時間に加えた取引時間全体で約定を可能にします。「プレ・オープン取引を可能にする」は、プレ・オープンセッションのみを通常取引時間に加えた取引時間での約定を可能にします。時間外取引では、成行注文は行えず指値注文のみとなります。時間外取引ではスプレッドが開きますが、約定機会を広げられるメリットがあります。流動性の高い銘柄であればスプレッドは大きく開かないため、時間外取引を有効にしても良いと思います。
有効期限の選択肢についても注文エントリーで選択できないものがあり、注文チケットにより多くの選択肢が表示されます。注文チケットでは、注文を有効にする開始日時と終了日時を指定することが出来ます。
アドバンス
・・・有効期限タブの右にはアドバンス設定が行えるタブがあります。「送信先」は通常はSMARTで良いです。SMARTは、全ての取引所から最良の価格で約定することを目指します。「裁量幅」は良く分かりません。「ストップ・ロス/プロフィット・テーカー/ブラケットを取り付ける」は、指値・逆指値および両方の注文(ブラケット)による決済注文のことです。「One Cancel Another」は、一つの注文が約定されれば他の注文が取り消しとなるように、複数の注文をグループ化するものです。ここに追加された注文と、注文エントリー(チケット)に入力された注文がグループ化し、どれか一つの注文の約定を目指すものです。この中の「オン・フィル」のタブでは、一つが約定した時に他の注文をどのように取り消すかの方法を選択します。→https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/?f=4301&ib_entity=jp 「ヘッジ」については分かりません。

注文エントリーの「発注」またはアドバンスタブの「証拠金の確認」か「送信」をクリックすると、注文確認画面が出ますのでその後発注ボタンを押せば実際に発注されます。

注文エントリー以外に「注文チケット」を利用する方法があります。注文方法に関して、注文エントリーに表示されるよりも多くの種類が表示されるようです。何故かは良く分かりません。また、注文に「条件」を付加する設定も注文チケットからのみ行えます。
注文チケットは、TWS画面右上のお気に入りやウォッチリストなどに銘柄を入力して表示させ、その銘柄を右クリック→取引→注文チケット とクリックして表示させることができます。また、各種ツール上から発注する際にも表示されます。
注文チケット上でAdaptive(適応アルゴリズム)を選択する場合は、まず注文方法欄にて「MKT」か「LMT」を選び、IBALGOタブにてAdaptiveを選択します。LMTで指値をすると、それより不利な価格に指値が移行しません。

「価格管理アルゴリズム」という機能がありますが、これは有効にしてもしなくてもあまり変わらないようです。米国株は、銘柄によって指値の価格制限があるようです。例えば現在価格から何%以上離れた指値は受け付けないというようなルールが設定されていることがあるようです。この範囲から離れた指値注文を取引所に送信しないという機能のようです。ただ詳しくは分かりません。
また、発注時の確認画面に「指値が制限3%を超過しています」というようなメッセージ(文言は正確に覚えていませんが)が表示されることがあります。これは単にTWSの機能として、誤発注防止の観点から、市場価格から一定以上離れた指値注文に対して警告メッセージを出しているものです。この設定はTWSの設定→プリセット から、株式であれば株式の項目を開き、「予備設定」の欄から変更できます。→https://www.interactivebrokers.com/en/software/tws/usersguidebook/configuretws/define_precautionary_settings.htm

実際にどの注文方法を使うかについて、私なりの解説をいたします。
流動性の高い株式銘柄の場合は、指値(LMT)か成行(MKT)で多くは事足りると思います。
オプション取引の場合、スプレッドが広いのが通常ですので成行は基本的に厳禁です。
指値を使ってBidとAskの間に注文を置いても良いですが、Adaptive(適応アルゴリズム)またはRELが使えます。
Adaptiveは、オプションのコンビネーション注文(スプレッド注文)には使えず、有効期限が当日の注文にしか使えず、「All or None」指定も出来ないようです。RELもコンビネーション注文には使えませんが、有効期限はGTC(キャンセルするまで有効)が選べ、「All or None」も指定できます。RELを使用する場合は、OFS(オフセット、補助価格)が0または任意の値幅を指定します。
RELはスプレッドが狭い銘柄に使えると思います。オフセット値が0の場合、指値は初め、こちらの注文と同じ側のNBBO(最良気配値)に置かれます。市場価格が約定方向に動けば約定し、非約定方向に動けば指値はNBBOに追従します(指値が不利な価格に移行し、約定可能性を維持します)。この場合、約定可能性は不安定で、約定価格もどうなるか分かりません。約定価格が不利な価格に移行し過ぎるのを防ぐために、指値を設定することができます。指値を設定すると、これより不利な価格には指値は移行しません。
RELを使用する場合は、OFS(オフセット値、補助価格)を0より大きい価格にすることで、より安定して約定を狙うことができます。OFSに入れる値幅は銘柄によります。ただし、常時大きめのスプレッドがある銘柄に関しては、LMT(指値)やAdaptiveのほうが良いかもしれません。大きめのスプレッドがある銘柄は、スプレッドの開き具合が時間によって大きく違ったりするので、適切なオフセット値が決めにくいと思います。概ね、最小値幅か+α程度のスプレッドしか開いていない銘柄に関してRELにてオフセット値を最小値幅にすることで、安定した約定を狙うことができます。最小値幅しか開いていない銘柄であれば成行で良いと思うかもしれませんが、概ね最小値幅しかスプレッドが無い銘柄でも、時間によって(特に市場開始時)スプレッドが開くことがあり、それに対処するためにRELが使えます。

Adaptive注文に関しては、私はnormalで行っていますが割と約定が長引くことも多いです。スプレッド内での指値の移行そのものは割と速いのではないかと思います。測定はしていませんが、スプレッド内の最も不利な価格まで移行するのに10~20秒くらいのように感じます。
ただ、元々スプレッドの最も不利な価格(NBBO)に近いところでしか約定しないものであった場合、仮に指値が最も不利な価格まで到達したとしても、相場がより不利な価格のほうへ少しでも移行していたら約定しない場合が出てきます。つまり、指値が比較的すぐに最も不利な価格へ移行したが約定せず、その価格に留まり続けるということが割と起こっているような気がします。なのでより確実に約定させたい場合はurgentを使用したほうが良いと思います。

通貨の両替を行う場合は、まず注文エントリー等に通貨ペアを「USD.JPY」のように入力してエンターを押すと入力されます。アドバンス設定にて、送信先を「FXCONV」にすると両替になります。25000通貨未満の場合、表示されている気配値でのスプレッドよりもコストが上乗せされるようですが、それでも低スプレッドです。スプレッドとは別に取引手数料がかかり、最低取引手数料は2ドルとなります。1000万円以下であれば2ドルだと思います。また、送信先を「IDEAL PRO」にしたとしても恐らく本質的な違いは無く、FXCONVの場合はポートフォリオにFXポジションとして表示されませんがIDEAL PROの場合は表示されるという違いがあるだけなように思います。「FXCONV」「IDEAL PRO」どちらの場合でも現物取引となると思います。これはFX会社で主流の差金決済取引とは異なります。差金決済のFXはIBでは「Forex CFD」となり、金利コストが異なる体系となります。

次に、各種ツールについて私の分かる範囲で簡単に説明します。
各種ツールの一覧は、TWS画面左上、注文エントリーの上にある「新規ウィンドウ」ボタンをクリックするか、各種画面やツール上に表示されている銘柄を右クリックする等で表示できます。
私は特にオプション取引に各種ツールを使うことが多いです。オプション取引に使うツールとして代表的なのは「オプション・チェーン」です。
スプレッド取引を行う場合、「スプレッドトレーダー」が使えます。原資産の銘柄をフォームに入力しエンターを押し、注文先はSMARTを選択します。別画面が開くので、そこでストラテジーを選択します。ここで満期日や権利行使価格で絞り込みを行えますが、一つの銘柄だけが残るように絞り込みを行ってしまうと次の画面へ進めません。そのため、複数の選択肢が残る状態にして先へ進みます。
次にテーブル変数を指定する画面が出ますが、これは表示レイアウトを決めるための設定です。最低一つは「行の変数」をクリックする必要があります。「固定値」は、プルダウンメニューになります。
その設定を終えたら、銘柄一覧が表示されるテーブル画面が表示されます。ここで対象銘柄の買気配または売気配をクリックすると、注文チケットが表れます。同時に、TWS親画面の注文エントリーにも同じ銘柄が入力されます。どちらで注文を行っても良いです。
その他、オプションや株式の組み合わせ注文には「ストラテジービルダー」も利用できます。「オプション・チェーン」と「オプショントレーダー」内にもストラテジービルダーの項目があります。ストラテジービルダーでは、様々なコンビネーション注文を作成することが出来ます。作成したコンビネーション注文は、一つの注文として指値などを行い発注できます。ただし、手数料はそれぞれ別個にかかります。最低手数料もそれぞれに設定されます(※情報を訂正しました)。
スプレッドやコンビネーション取引は「注文チケット」から直接指定して発注することも出来ます。私は、オプションのコンビネーション注文であればオプションチェーン内のストラテジービルダーを用いています。

オプションをロールオーバーする際は、個別に注文を出すのではなく、一つの注文として出すと便利です。そのために「オプション・ロールオーバー」も使用できます。まず「ロールオーバーするオプションを選択」にて、自身で保有しているロールオーバー対象のオプションをリストアップするための条件を指定します。その後「リストをリフレッシュする」でリストアップされます。「ロール先」項目の右にあるペンマークをクリックすることで、ロール先のオプション選択画面が開きますので、そこでロール先のオプションを選択します。注文を作成するオプションのみにチェックを入れ、「注文の作成」を押下すると注文が作成されます。その後発注という流れです。
オプションのロールオーバーには、スプレッドトレーダーやストラテジービルダーも使用できます。自身がロングオプションのロールオーバーを行いたい場合は、そのオプションの売りに加えて、ロール先オプションの買いを組み合わせる注文を行えば良いです。この例では、同じ権利行使価格ならカレンダースプレッドの買いになります。注文チケットからでも直接注文できます。

オプションの権利行使については2種類の設定があり、権利行使を行うと即座に権利行使される設定と、取引所の締め切り(米国株式オプションは米国時間16:30)までは実際の発注はされず、締め切りまでは取り消し可能になる設定があります。TWSの設定で、注文→設定 から変更できます。デフォルトでは取引所の締め切りまで発注されない設定かと思います。

IBでは、決済する建玉の優先順位をどの方法に基づくかを「Tax Optimizer」を用いて指定することが出来ます。しかし日本の税制上、株式については決済時の原価を「総平均法に準ずる方法」によって計算すると決められているので、IB側による指定には意味がありません。また、株式・指数オプションも同じく「総平均法に準ずる方法」によって計算することになると思われますので意味がありません。
先物・Forex CFDなど、差金決済方式による商品は日本の税制上、特別に決済時の原価の計算方法が定められていないので、IB側による指定に従うことになります。なのでTax Optimizerが使える場合は有効です。参考→ 海外証券会社の税制と確定申告
IBでは決済の優先順位はデフォルトでは「先入先出法」となり、古い建玉から順番に決済する方法です。
Tax OptimizerはTWSの口座→税→Tax Optimizer または、TWSのポートフォリオ欄にある銘柄を右クリック→建玉を変更 から起動できます。Tax Optimizerでは個別の取引ごとに、決済順序を指定できるようです(試したことが無いので詳しくは分かりませんが)。Tax Optimizerを使用することで年度内の実現損益を調整できます。日本の税制上、米国IB証券を使用した取引では、年度内の実現損失は来年度へ繰り越せないため、実現損失はなるべく少なくするのが良いです。一方で利益が出ている場合はどの程度の実現利益を出せば良いかは状況によります。

2019年9月18日 (水)

VIX投資手法の解説 (VXX空売り)

VIX投資の方法は様々ありますが、私はVXXを空売りする手法を行っています。今までの経験から得たことをここで公開しようと思います。ボラティリティのショート戦略について解説する記事となります。
私の基本手法は長期でVXXを売り続ける手法ですが、VXXが上昇した際に余力があれば追加で売ることについても解説します。
※追記 この記事ではコールオプションを用いたヘッジを薦めている部分がありますが、現在ではプットオプションのロングによる手法を薦めています。通常の口座では、コールオプションでヘッジすると、損失は限定されても証拠金余力の低下は限定されないからです(IB証券のポートフォリオマージン口座では大丈夫かもしれません)。

目次
商品の選択
証券会社の選択
税金の問題
VXX強制買戻しへの対処
オプションについて
VXX空売りの追加投資
米国VIとの比較
現時点でのまとめ

 商品の選択

VIX関連銘柄はいくつかありますが、最も代表的で流動性も高いのがVXXです。流動性が高いことは、空売りする際の利点となります。というのも、空売りが規制されることがしばしばあるからです。流動性が高い銘柄の方が規制はされにくいのでは無いかと感じます。
また、VXZのようにVXXよりも値動きが少ない銘柄もあります。VXZは概ねVXXの1/3ほどの値動きのように思います。
VXXと逆相関で動くVIX関連銘柄もあります。インバース型と呼ばれ、SVXYなどが代表です。それらはロングすることで、ボラティリティをショートしたのと同じ意味を持ちます。
インバース型のロングポジションであるメリットは、損失限定、利益無限大、複利が働く、ということです。ショートの場合は正反対の性質を持ちます。
しかしインバース型のロングポジションのデメリットは、一日か数日のうちに「急激な価格下落に晒された場合、価格が戻ってこれない」、「長期的に価格に漸減作用が働く」ことです。これはレバレッジ型のロングにも当てはまる特徴です。
ロングポジションは、損失は投資資金全額に限定されており、順調に利益が出続けている状態なら複利が働くというメリットがあるものの、このデメリット、特に急激な価格下落に弱いという事を考慮すると安定的な資産運用には向かないと結論付けています。
インバースやレバレッジ型商品は、元となる商品における前日の価格に対する変化率に基づいています。その変化率をマイナスにしたのがインバース、何倍かにしたのがレバレッジ型です。
例えばVXXのインバース型の場合、VXXが仮に1日で70%も急騰したならば-70%となります。VXXが次の日は20%下落したならばVXXは1.7*0.8=1.36 つまり元の価格から36%上昇している水準となります。対してインバース型では0.3*1.2=0.36 つまり元の価格から63%下落した水準となります。このように値動きの上下が激しいほど、インバースおよびレバレッジ型は損失が膨らみやすくなります。逆に値動きが上下どちらかに一方的である場合は有利です。このようなクセを抑えるためには、ロングポジションの場合、価格が下がったらその分を穴埋めるように買い、価格が上がったらその分を売るということが必要です。しかし、常に機動的にそのようなことが出来るとは思えません。また、このような操作を行う事によってVXXのショートによる損益の値動きと近くなります。
インバース型、レバレッジ型商品には価格の急落に伴い償還条項が付いているものもあるので、それも注意すべき点です(2018年2月のVIXショックの際に実際に償還されるものが出てきて話題となりました)。
インバース型のロングポジションは安定的な資産運用には向かないと言っても、VXXなどのショートポジションなら安定的に運用できるかというとそれも一概には言えません。ショートは理論上、損失無限大だからです。
そのリスクへの対処法をこれから解説しますが、一番有用なのはオプション(コールオプションのロング)を利用することです。VXXの空売りを、コールオプションを購入することでヘッジできます。そのためにはオプションを利用できる証券会社を選ぶ必要があります。

VXXを空売りする代わりに、VXXプットオプションを購入するという方法もあります。これはVXXショートとそのヘッジのためのオプション(コールオプションのロング)を組み合わせたものと同じ原理となります。これは前述した「VXX空売り+コールオプションのロング」に代わる第二の選択肢となると思います。この2つの手法は原理は同じなのですが、税制の扱いが異なります。詳しくは後述します。※追記 「VXXショート+コールオプションのロング」では、損失は限定できても証拠金余力の減少を限定できないため、強制決済が発生する可能性があります。そのためプットオプションをロングする方法のほうがお薦めです。
VIXオプションを利用することも可能です。ただこれは後述する米国VIと同じクセがあり、つまりVIX先物の満期に近づくにつれてリスクが増大するというクセがあります。ただし、遠めの限月のものを選んでロールオーバーしていく限りにおいてはそれほど差は出ないと思われます。一か月以下の満期のオプションの場合、満期が近づくに連れ加速度的にリスクが増大していくため注意が必要です。
また、VIXオプションは常にそれと同一の満期のVIX先物を対象とするため、遠い限月のオプションを選択する場合は必ずそれと同じ遠い限月のVIX先物が対象となります。私の投資手法はVXX(満期30日のVIX先物)に、一番遠い限月のVXXオプションを組み合わせるという手法ですがそれと同じ事は出来ません。VXXには幅広い限月のオプションが設定されていますが、VIX先物には常に同一満期のオプションしか用意されていないということです。例えば満期まで30日のVIX先物をショートし、満期まで100日のVIXコールオプションをロングしたとしてもあまりヘッジにはなりません。満期まで100日のVIX先物のリスクは相対的に低く、そのコールオプションもまた値動きが小さいからです。正確に言えばVIXオプションの原資産はVIX指数であり、VIX指数に対して幅広い限月のオプションが設定されている形となり、それ故にVIX先物にはそれぞれ同一満期の一つのVIXオプションが対応関係になっているということです。VIX指数そのものは取引できず、取引可能な形として様々な満期を持つVIX先物が存在します。そのためVIXオプションはVIX先物との関係で考える方が分かりやすいと思います。VIX先物オプションは存在しません。
VIXオプションの利点としては、空売り規制の影響を受けない事です。例えばVXXに空売り規制が発動されるとVXXオプションも取引停止になる可能性があるらしいのですが、そのようなことはVIXオプションには起きないと思われます。

それ以外の選択肢としては、GMOクリック証券が提供するCFDである「米国VI」があります。これもVXXと似たようなものなのですが、VXXは常に組入れしているVIX先物の満期平均が30日となるように日々少しずつ先物のロールオーバーを繰り返しているのに対し、米国VIは先物の満期が一週間程度まで近づいた時に先物を期先にロールオーバーします。つまり、VXXはリスクとリターンが一定であるのに対し、米国VIは組入れ先物のロールオーバー時期が近づくほどにリスクとリターンが増大するということです。
株式で例えるならば、その時期に近づくほどに、少しづつ株式を追加購入していっている、というような認識で良いと思います。そしてロールオーバーによって、今まで追加購入した株式分を全て売り、元通りのポジションに戻る、ということになります。
つまりロールオーバーという行為によって、一部が利益確定または損失確定されるということです。一部の損益を確定させたくなければ、ロールオーバーした直後にポジションを増やし、次第に様子を見ながらポジションを減らすという操作が必要です。
参考までに、VIX先物の満期7日と満期30日では、およそ1.5倍程度のリスク差があると思います。なので米国VIのロールオーバー日にリスク保有総量を変えたくなければ、ロールオーバー後にポジションを概ね1.8倍前後に増やす必要があります。ロールオーバー後の残り満期は30日よりも長いため、1.5倍より多めに見積もりました。
米国VIにはこのようなクセがありますが、それを差し引いても優秀な面があります。それはVXXなどの現物と違って貸株料がかからないこと、取引時間がほとんど一日中であること、VXXと違って価格が漸減しないため放置していても利益率が低下しないことです。
貸株料がかからないので、ポジションの保有コストは安くなります。また、逆日歩のようなコストもかからないのは大きな利点だと思います。売買時のスプレッドコストは多少高いと思います。また、相場が荒れた際はスプレッドが開くかもしれません。
取引時間が一日中であれば、機会損失が少なくなり、更にロスカットが機能しやすくなります。流石に土日は取引できませんが、それ以外であればほぼ一日中ロスカットが機能するため、取引所が開いていないとロスカットが機能しないVXXのような現物取引よりも安心してロスカット機能が使えます。
価格の漸減についてですが、VXXというのはロールオーバーによって発生する損益をVXX価格の中に反映するため、長期的に価格が漸減します。空売りではそれによって利益を得ます。米国VIの場合、ロールオーバーによる損益は価格に反映せず、価格調整額という形で外に放出されます。そのため価格自体は放置しても漸減していかないため、追加投資を必要としません。VXXの場合、価格が漸減すれば、それを穴埋めるように追加投資を行わないと次第に利益額が減少します。
逆に欠点としては、割と新規取引の停止が起こりやすいことです。VIXが高騰したタイミングで新規取引停止が起こりやすいです。
GMOクリック証券はオプションによるリスク限定方法は取れないものの、ロスカットによってリスクを限定する方法を取る場合であれば米国VIは最有力候補です。

証券会社の選択

私は、VXX空売りのリスクをオプションで限定する方法が有用だと思っています。この方法を取るには、オプションの扱いがある証券会社である必要があり、VXXの空売りがスムーズに行えることが望ましいです。これは少なくとも海外の証券会社となります。
コスト面では、空売りにかかるコストが低いのが望ましいです。というのも、空売りにかかるコストが10%程度ある証券会社も珍しくはないからです。ただし、プットオプションをロングする手法のみを行うのであればVXXの空売りは必要ではありません。オプションの1取引単位は株式100株に相当しますので、プットオプションのみで行う場合、100株未満に相当する金額での売買が行えないのがデメリットです。一方で裸でのVXX空売りはリスクですので、そのようなリスクを全く取らないという意味ではプットオプションのみでの取引はメリットです。
これらの条件を満たすのがIB証券(Interactiv Brokers, インタラクティブブローカーズ)です。ただし、口座開設要件、オプション取引許可要件が高めということはあります。
Firstrade証券(ファーストレード証券)も有名であり、ここは貸株料が通常かからないというメリットがありますが、空売り規制が厳しいため、満足にVXXの空売りが行えません。しかし、プットオプションを購入する手法を取る場合は、選択肢となるかもしれません。ただ、VXXに空売り規制がある状況で新規にプットオプションを購入できるのかということの確認はしていません。
IB証券とFirstrade証券の詳しい紹介についてはFirstrade証券、およびIB証券について を参照ください。

税金の問題

IBを初めとした海外の証券会社を利用する場合、税金の問題があります。海外の証券会社で取引する場合、株式や先物、オプションなど全ての商品について、損失の3年間に渡る繰越が利用できません
事業所得として申告する場合は別ですが、事業所得の認定は厳しいと思われます。
損失の繰越が出来ないという問題は、安定的な資産運用を出来なくさせるリスクです。例えば、ある年に100万の損失を確定させてしまったとして、次の年にその100万円分を取り戻したとしても、その100万円は利益として課税されるということです。
実質的には利益は出ていないにも関わらず、課税される恐れがあるということです。
次にそれに関わる税率ですが、株式であれば申告分離課税として20%、オプションや先物であれば総合課税となり15%~55%の累進性となります。総合課税は、給与所得などと合算した所得金額をもとに税率を計算し、平均的な収入であれば15%ですが高所得者は最高50%近い税率になります。
損失の繰越が出来ない点、総合課税の場合は税率が高くなる可能性がある点を考慮すると、次の投資方法が最もそれら税リスクを軽減させる方法です。
・VXXなどの株式を空売りし、できるだけ一定の含み益を常に残しておく。
プットオプションのロングなど、株式を利用せずにオプションのみを使用する方法では、年度内に損失が確定してしまう場合があります。オプションは限月が設定され、満期日には必ず決済しなければいけないからです。これは先物でも同じです。
つまり、年度内に損失を確定してしまう可能性をできるだけ避けることが重要です。そのためには長期保有が可能な株式が有利です。
しかし、株式の空売りの場合は必ずしもずっとポジションを保有していられる保証があるわけではありません。需給関係によって買戻しを迫られることも想定されるからです。これが起こるとしたら、相場が荒れている時、VIXが高騰してVXX空売りの損益がマイナス方向になっている時である可能性が高いです。
この事を想定して、仮に買戻しを迫られたとしても損失がなるべく出ないように備えることが第二の対策です。
つまり、なるべく含み益を残すようにするのです。
含み益が十分に溜まったら、その後は少しずつ決済していけば良いと思います。
ちなみにIB証券ではデフォルトでは先入先出法(決済時には古い株式から順に決済する方法)になっています。しかし日本の税制上は、IBの方法に関わらず「総平均法に準ずる方法」(決済する株式のポジション取得価格に平均価格を用いる)で計算します。

税金にはもう一つ問題点があり、それはオプションと株式の損益を通算できないことです。
オプションによるヘッジをしている場合、VXXが損失となってもオプションに利益が出ていることも考えられますが、オプションの利益とVXXの損失は損益通算できませんので、VXXなど株式グループ単体で損失を確定させないことが重要です。国内の証券会社で取引している上場株式で利益確定できるものがあれば、その利益と、海外の証券会社の上場株式(VXX含む)で確定した損失は損益通算できます。
逆に、VXXの利益とオプションの損失(コスト)も損益通算できません。「VXX空売り+オプションによるヘッジ」の手法では、VXX空売りに利益が出ている状態では常にオプションは損失となります。しかし、税金はVXXの利益全額に掛かってきますので、最終利益である「VXXの利益 - オプションコスト」に対する税率は20%よりも高くなります。この税率を抑えるためにはオプションコストを少なくするか、総合課税の雑所得に分類される収入を作って相殺するかする必要があります。
しかし私の試算では、オプションによって真面目にヘッジしようとすればVXXショートによる利益の半分程度をオプションコストが占めます。詳しくは後述します。その場合、オプションコストを引いた最終利益に対する税率は40%程度になります。オプションコストを他の収入で相殺できれば別ですが、これだけ大きなオプションコストを他の収入で相殺しようとするのも通常は難しいように思われます。この問題は、プットオプションの購入による手法を用いれば解決されます。プットオプションであれば全てオプション取引として完了するため、実質税率が高くなることもありません。一方でプットオプションの場合、満期日があるために前述したように年度内に損失が確定してしまうリスクがあります。そこで考えられるのは以下の方法です。
・最も満期日が長いプットオプションを購入し、相場が落ち着いている時を見計らってロールオーバーすることにより長期の満期を維持する。
VXXオプションの場合、もっとも満期までが長いもので最低1年の残存期間があります。満期日までが長ければそれだけ猶予がありますので、その中のどこかのタイミングでは相場が落ち着いている時がある可能性が高いです。そのタイミングで決済し、ロールオーバーを行えば大きな損失が出ることはありません。もちろん、このように絶対できるとは言えません。前述した「VXX空売り+コールオプションのロング」の手法の場合でも、VXXが強制決済される恐れが無きにしも非ずであり、年度内に損失が確定してしまう可能性があります。その対策として出来るだけ含み益を残しておくのですが、一方でVXX空売りにかかる損失は理論上無限大であるため、年度内に確定する損失が大きくなる可能性があります。プットオプションの場合は損失が限定されます。年度内に確定する損失が大きいほど、翌年度以降にその分を取り戻したとしてもその額が大きくなり、それに対する税も高くなります。一方でプットオプションは総合課税であり、15~55%の累進性となります。そのため本人の所得によっては税率が高くなります。長期のオプションを利用するという方法は、後述しますがオプションコストを安定させるという意味でも有用だと思っており、私の投資手法にも合致します。

これら税金の問題を解決するもう一つの方法は、法人を作ってそこで投資を行うことです。個人の場合でも、事業所得として認定されれば損失の3年までの繰越は行えるようになります。ただしオプションと株式の損益通算は行えません。また、事業所得としての認定は厳しいと思われます。法人であれば損失の9年までの繰越およびオプションと株式の損益通算が行えますので、これら税制上の問題はほぼクリアできます。法人としては具体的には合同会社が適しています。しかし、法人税の実効税率はおよそ30%か30%弱であり、そこから配当として利益を個人に分配する場合、更に5%~20%の配当課税がかかります(配当控除を考慮)。これは収入に応じます。配当ではなく給与収入として出す場合は、その部分には法人税はかからず、代わりに個人の所得税(総合課税)がかかります。その辺りの事情を考慮しなければいけませんが、オプションを用いるVIX投資においては法人の設立を検討することも選択肢になると思います。

VXX強制買戻しへの対処

※現在VXXプットオプションを用いる方法を薦めており、それにはこの項目の情報は必要ないかもしれません。

VXXは流動性が極めて高い銘柄ですが、一応、あらゆるリスクは想定していなければいけません。仮に強制買戻しがあったとして、それはほぼVXXが高騰している時だと思います。ただ私が見ていた限り、2020年3月のコロナショックの際にVXXが暴騰した際は、VXXの空売り在庫が足りなくなったり強制買戻しのある兆候は見られませんでした。とは言えそのリスクは考慮しなければいけません。
そのような時に次の一手をどうするかについては投資家の判断にもよります。
VXXが高騰してこれ以上は危険だから、強制買戻しによって決済されるのは寧ろ好都合と考える場合もあるかもしれません。逆に、このまま何もしなければVXXが低下した時、損だけが残ってしまうと考えるかもしれません。
しかし、もともとオプションでヘッジしている場合は、ロスカットをする必要が無いため強制買戻しは単なる機会損失と捉えられます。
そこで、VXXの代わりとなる投資に繋げる必要が出て来ます。
VXX空売りの代わりとなり、かつ投資を制限されないであろう方法は、VIXオプションのプットのロングまたはヘッジ無しだとコールのショート、VIX先物売り、GMOクリック証券の米国VI売り、そしてSVXYなどのインバース型のロングです。VXXオプションはこういう時、VXXと同じく取引制限されますので利用できないと考えた方が良いです。
これら代替の方法がすぐに利用できるような環境にしておくことが大事だと思います。SVXYなどインバース型は、確かに価格急落後に価格が元の水準まで戻ってこれない可能性があるのですが、既にVIX指数が相当程度上昇しているタイミングで購入すれば、そのリスクはある程度抑えられるのでは無いかと思います。もちろん、絶対ではありませんが。

オプションについて

VXXを空売りした場合、どのようにしてオプションを用いるかについて解説します。私もまだ結論は出ていない部分もあります。ここでは「VXX空売り+コールオプションのロング」による手法について主に解説しますが、プットオプションによる手法の場合でも原理は同じであり、税制上の扱いが違うだけです。
※追記 現時点ではプットオプションのロング手法のほうをお薦めします。「VXX空売り+コールオプションのロング」では、損失は限定できても証拠金余力の低下は限定できず、強制決済の可能性があるからです。
プットオプションのロング=原資産(VXX)のショート+コールオプションのロング となります。ストライクプライス(権利行使価格)は同じものを選択し、コールオプションの場合のアウトオブザマネー(OTM)はプットオプションではインザマネー(ITM)となります。

まずオプション1枚(1コントラクト)は100株の原資産(この場合100株のVXX)に対応します。つまり、オプション1枚で100株のVXXを完全にヘッジ(損失限定)できるということです。
100株のVXXは価格にして2019年現在、25*100ドル=30万円弱となります。VXXを100株未満の単位で売買する場合、オプションはそれに合わせて売買しにくいということがあります。
このような場合、例えば80株未満のVXXポジションにはオプションを購入せず、80株を超えればオプションを一枚買ってヘッジするというような方法があります。または、100株未満の株式に対しては、コストの安い、より遠いストライクプライス(権利行使価格)のオプションで対応するという方法もあります。

オプションはコールオプションのロングを用います。そこで限月とストライクプライスの選択の問題があります。
まずは限月についてですが、私は最長の限月のオプションを選んでいます。コストだけで見れば、相場が落ち着いている状態が続くと仮定するならば、一か月程度のオプションを繰り返しロールオーバーしていくほうが期間コストは遥かに安いです。しかし、短い満期のオプションの最大の問題点は、ロールオーバーしたい時に相場が荒れておりボラティリティが高い場合、オプションプレミアム(オプションの価格)もまたかなり上昇しているためロールオーバーに伴うコストがかなり高くなるという点です。この状態が続けば、ロールオーバーコストが更に嵩むことが予想されます。
満期の長いオプションの場合は、相場が荒れた時にも、また相場が落ち着く時を待つことが出来ます。つまり、相場が荒れた時にロールオーバーしなければいけずコストが嵩むことを避けられる可能性が高いということです。必ずそれを避けられる訳ではありませんが、オプションというのは相場が落ち着いてボラティリティが低い時に購入するほうがプレミアム(価格)はずっと安くなります。最長の限月は、少なくとも1年から2年程度となります。長期のオプションは、次の長期限月が設定された際に、相場が落ち着いている時を計ってロールオーバーします。

次にストライクプライス(権利行使価格)ですが、これはアットザマネー(ATM)からファー・アウトオブザマネー(far OTM)まで幅広く選択肢があります。
アットザマネー(ATM)のコールの場合、損失はゼロ、その代わりにオプションのプレミアムが高く付きます。
アウトオブザマネー(OTM)の場合、オプション購入時の原資産価格(VXX価格)との差が最大損失額となります。ストライクプライスが高く、原資産価格から離れれば離れるほどオプションプレミアムは安くなりますが、最大損失額も大きくなります。
私はVXX価格から2~3倍程度のストライクプライスのコールを選んでいますが、この辺りはまだ結論が出ていません。

重要な注意点は、税制です。オプションコストはVXXの利益と損益通算できないため、オプションコストが嵩むほどに、税率は実際の利益額を基準にすると高くなっていきます。長期のオプションを使用する場合、ATMに近いオプションのコストは優にVXXの利益の半分以上を占めると思われ、その場合、税率は最終利益に対して2倍以上に成り得ます。
ただし、雑所得の総合課税収入が別に存在し、オプションコストと相殺できる場合であれば問題にはなりません。例えば、VXX空売り手法とは別にオプション売りなどによって収入を得ている場合です。むしろ、オプションコストを相殺するために積極的にオプション売りなどでオプション収入を得た方が良いと思います。それでもATMに近いオプションの多大なオプションコストを相殺するのは難しいと思われるので、その場合はよりOTMのオプションを選択するのが良いと思います。また、雑所得の総合課税というとソーシャルレンディングも当てはまりますのでこれに投資しておくのも良いと思います。プットオプションの購入による手法の場合は、この問題は起きません。

オプションコストの具体的な数値を示しますと、概ねATMの最長オプションがVXX価格に対して年率30%弱、ストライクプライスが2倍のOTM最長オプションが年率12%程度のコストです(相場が落ち着いている時)。ただしこれは、オプションを乗り換えることなくずっと持ち続けた場合のコストです。
私の方法ではオプションは満期まで保有することは無く、次の限月が設定されたらなるべく早く乗り換えます。この場合、オプションコストは更に高く付きます。というのもVXXが仮に順調に下げているとすると、オプションは長期のものほどVXXの価格下落に反応してオプションプレミアムが剥離しやすくなります。長期のオプションは、保有を始めた時が一番VXXの下落によってプレミアムが剥離しやすく、満期に近づくにつれプレミアムの剥離が遅くなるということです。つまり、同じオプションをずっと持ち続けて満期が近づくままにした場合のコストよりも、常にロールしてオプション満期を長期に維持する場合のほうが大分コストは高くかかります。なので上記の目安よりも実際はもっとかかります。

オプションにはデルタという指標があります。これは原資産の価格変化に対し、オプションプレミアムがどの程度の割合で変化するかを示したものです。オプション計算機は次のものを使用しました。→www.optioneducation.net/calculator/main_advanced.asp
またはこちら→https://www.optionseducation.org/toolsoptionquotes/optionscalculator
算定に必要なインプライド・ボラティリティ(IV)については、基本的にストライクプライスがOTMになるほど徐々に高く、残存期間が短いほど徐々に高くなるため、それも考慮しています(数値の正確性は保証できませんが)。VXXオプションはアメリカンタイプとなります。
ちなみに、IB証券を利用している人はTWSのオプション分析ツールを用いれば、各オプションのデルタ等ギリシャ指標は簡単に分かります。
VXX価格からストライクプライスが2倍のOTMオプションのデルタは約0.35(残存期間1年)~0.4強(残存期間1年半)のようです。つまりVXXが下落した分の40%前後オプションプレミアムも下落するため、利益は60%近くにまで落ちるだろうということです。
ストライクプライスが2.5倍のOTMオプションの場合、デルタは約0.25(残存期間1年)~約0.35(残存期間1年半)となるようです。この場合、利益は70%前後まで落ちます。
ストライクプライスが3倍のOTMオプションの場合、デルタは0.2弱(残存期間1年)~0.3弱(残存期間1年半)となるようです。
ATMのオプションのデルタは0.7弱となるようです。
デルタは原資産価格とストライクプライスが離れるほど低くなります。ということは、VXX価格が下がってストライクプライスから離れるほどデルタは少しずつ低下しますので、オプションプレミアムの下落も少しずつ緩やかになります。
例えば、ストライクプライスが60のオプションを保有するとします。VXX価格が30の時デルタは0.4前後ですが、VXX価格が24まで下がればデルタは0.3前後となります。更に20まで下がればデルタは0.25前後となります。
そのため、VXX価格が下がり続けてもオプションのストライクプライスを変えない場合は、オプションコストが低下し利益率は上昇していきます。それに対し、VXX価格が下落するのに合わせてオプションのストライクプライスも下げて行き、ストライクプライスの割合をVXX価格から一定に保つ(例えば2倍、3倍など)手法を取る時に、デルタは一定を維持します。
つまり、例えばストライクプライスが2倍のオプションのデルタは0.4前後になるとは言え、それは継続的にその2倍の水準を維持する前提での話となります。

長期オプションはデルタの影響が大きいものの、それ以外にオプションにはタイム・ディケイ(時間価値の減少)という概念があり、時間経過によっても少しずつプレミアムが減少します。これはセータという指標で表されます。これについても計算機にて確認してみます。これを基に、残存期間が1年から1年半のオプションについて、原資産価格の何%に相当する値が日々減少するのかについて、その%を一年間分に換算(365を乗算)して示してみます。
ストライクプライスがVXX価格から2倍のコールオプションは、VXX価格の15%強(残存期間1年)~13%(残存期間1年半)に相当する額だけ、プレミアムが年間に減少するようです。
ストライクプライスが2.5倍のオプションは13%弱(残存期間1年)~12%強(残存期間1年半)の減少となります。
ストライクプライスが3倍のオプションは約11.5%(残存期間1年)~11%強(残存期間1年半)程度となります。
ATMのオプションの場合やや幅があり、約14%(残存期間1年)~約11%(残存期間1年半)程度となります。
注意点として、例えば残存期間が1年でストライクプライスが2倍のOTMオプションの場合、VXX価格の15%強に相当する額がタイムディケイによるコストとして発生することが分かりますが、これは残存期間1年を継続的に維持し、ストライクプライスもVXX価格から2倍の水準を維持するようにオプションをロールしていく仮定の上での話となります。VXXが下落してストライクプライスとの差が開いていくままにすればタイム・ディケイは緩やかになっていきます。上記にあるように、ストライクプライスがVXX価格の2.5倍となる水準までVXXが下落した時はタイム・ディケイは13%弱となり、3倍となる水準までVXXが下落した時はタイム・ディケイは11.5%程度となります。
ちなみに、仮にVXX価格に対するタイム・ディケイ値のパーセンテージは一定でも、VXX価格自体が下がることによってタイム・ディケイの絶対値も下がりますが、VXX空売り投資では落ち着いた相場の中でVXXが価格下落を続ける時、その下落を穴埋めるようにして追加投資を行いVXXのポジション額を維持します。この追加投資については後述します。また、追加投資分に対応するオプションも購入します。つまり、前述したタイム・ディケイ値の目安率をVXXの時価総額に乗算したものが、今後継続的にオプション(追加投資分に対するものも含めた)にかかるタイム・ディケイによるコストと見做して良いと思います。
このようなコストが、デルタによる価格下落コストと併せてかかることになります。
ここまでの計算方法の正確さについては全く保証できませんので、目安程度にして頂ければと思います。

こうして見ると、長期オプションはVXXが順調に下落をしている時はそれなりのコストがかかってくるということが分かります。その代わり、VXXが上昇している際はプレミアムも上昇しやすくなります。
短期のオプションをロールしていく方法のほうが、VXXが順調に下げていく状態であればコストは遥かに安いです。しかし荒れ相場が続いた時は、その中で短期のオプションをロールしていくほうがコストは高く付くのではないかと思います。どちらを取るかの問題だと思います。
荒れ相場の際、短期オプションに実際にどの程度のコストがかかるのかは、今後検証してみる予定です。

前述のように、長期オプションのデルタの水準は高く、VXXが上昇した際にもそのデルタ分だけオプションプレミアムも上昇します。更にVXX価格がストライクプライスに近づくに連れデルタ自体も上昇するため、更にオプションプレミアムの上昇速度も上がります。
そのため、例えストライクプライスがVXX価格から離れている時でも、長期オプションではオプションプレミアムが上昇しやすいため、その時点でもVXXの損失をある程度カバーすることが出来ます。逆に短期オプションの場合は、VXX価格がストライクプライスに近づかないとオプションプレミアムがあまり上昇しません。
このことから、長期オプションは短期オプションと比べて、遠いOTMであってもヘッジが効きやすいということは言えると思います。短期オプションの場合よりも、より遠いストライクプライスを選択してもリスクは一概に増えないということが言えるかもしれません。
ただし長期オプションの特性によって損失は限定できても必要証拠金まで同じように限定できるかは分かりません(プットオプション買いの場合は証拠金制度は関係ありません)。
長期オプションはどの程度のヘッジ効果があるのかについて試算してみました。
例として残存期間480日、ストライクプライスがVXX価格から3倍のOTMオプションについて、VXX価格が上昇するに連れてその損失をどの程度カバー(相殺)できるのかについて調べました。VXX価格は100とします。
VXX価格が2倍の200まで上昇すると、オプション価格は40弱上昇します。この時点での損失は60強です。
VXX価格が3倍の300まで上昇すると、オプション価格は初めの地点から100上昇します。この時点での損失は100です。
VXX価格が4倍の400まで上昇すると、オプション価格は初めの地点から180弱上昇します。この時点での損失は120強です。
VXX価格が6倍の600まで上昇すると、オプション価格は初めの地点から340強上昇します。この時点での損失は160弱です。
VXX価格が10倍の1000まで上昇すると、オプション価格は初めの地点から720上昇します。この時点での損失は180です。

ただし、この試算はボラティリティを一定水準(相場が落ち着いている時の水準)で計算しています。相場が荒れた際はボラティリティは上昇するため、実際にはもう少しオプション価格が上昇し、損失は抑えられると思われます。
この例ではストライクプライスがVXX価格から3倍のオプションを選んでおり、理論上の最大損失はVXX価格の2倍である200です。しかしその最大損失付近まで到達するのはVXX価格が少なくとも10倍以上になった地点であることが分かります。
この事から分かるのは、VXXの長期コールオプションは理論上の最大損失(原資産価格とストライクプライスの差)に到達するまでにはストライクプライスを遥かに超える原資産価格の上昇が必要であり、原資産価格がストライクプライス以下に留まる場面での損失は、理論上の最大損失額に遠く及ばないということです。
つまり、同じストライクプライスで比べるならば、短期オプションよりも純粋にヘッジ効果が高いという結果になりました。そのため、長期オプションの場合はより遠いストライクプライスを選択しても、通常は高いヘッジ効果が維持されやすいと思われます。しかし注意点としては、理論上の最大損失額は依然として遠いストライクプライスのほうが不利であり、原資産価格(VXX価格)が暴騰を起こすような局面では最大損失額まで到達し得えるということです。

VXXが高騰しているタイミングで空売りした場合は、オプション価格も相応に高騰しています。その時、オプションを同じタイミングで購入するのが一番安定した方法ではありますが、オプションコストを抑える方法としてはVXXが落ち着くのを待ってオプションを購入するという方法もあります。リスクとしては勿論、オプションによるヘッジが無いままVXXが更に高騰してしまえば損失が膨らむ可能性があるということです。
また、そもそもVXXオプション1枚はVXX100株単位に対応するため、VXXを小分けで空売りする場合はどうしてもヘッジ無しポジションが出来てしまいます。なので常に完全なヘッジを求めるのは不可能ですが、ヘッジ無しVXXポジション量があまり大きくならない範囲でコントロールするのが良いと思います。
→追記・・・VXXを裸で売るのはリスクであるため、プットオプションの購入のみで行うのが良いと現在では考えています。
長期オプションをより長い限月にロールオーバーする際も、コストを抑えるためになるべく相場が落ち着いている時を見計らってロールオーバーします。

オプションコストを抑えるもう一つの方法ですが、VXX空売りまたはプットオプションのロングをしつつ、低い権利行使価格にてプットオプション売りを行うことがあります。そうすることでプットオプション売りにより獲得するプレミアムが、オプションコストの一部を相殺します。
この場合、プットオプション売りの満期日にVXX価格がその権利行使価格を下回り、更に下回った額が獲得したオプションプレミアムを上回れば損失になります。この損失はVXXショートによる利益で相殺されるので、全体としてはゼロ損益ですが、VXXショートの利益損失にはなります。そのため、プットオプション売りの権利行使価格はVXX価格がそこまで下落し得ないだろう水準で設定するのが良いと思いますが、低すぎると受け取れるプレミアムも加速度的に低くなります。
より遠い(低い)権利行使価格のプットオプションを複数枚売るという方法もあります。これは、獲得するオプションプレミアムを維持しつつ、より損失となる可能性が低くなりますが、万が一その権利行使価格を超えてVXX価格が下落した場合は損失が膨らみます。危険そうであれば満期日まで待たずに損切を行うことも必要かもしれません。
VXX価格が高騰した際においてもこの方法は有効だと思われ、VXX価格は一定の水準を超えて高騰したら(例えばVIXが20を超える場合)、すぐには元の水準には戻らない傾向があるため、そのような時にVXXを空売りしつつ、低い権利行使価格にてプットオプションを売ることでオプションプレミアムを獲得することができます。
プットオプション売りの満期は短い方が安全だと思います(一週間前後)。その満期日までにVXX価格が到達し得ないだろう権利行使価格を設定すれば良いのではないかと思います。
私は実際に行っていますが、このようなオプション売り手法というのは、コツコツドカンという、勝率は高いけれども一度の損失が大きくなるという特徴があります。この手法が有効なのはおそらくボラティリティが高い時で、ボラティリティが低い平常時に行っても大きな利益にはなりにくい気がします。

VXX空売りの追加投資

VXXは過去平均で、一年間に50%ほど下落しています。VXXは放置すると、下落方向に作用する複利が原因で、次第に下落幅が減少します。次第に下落が緩やかになります。これは次第に元本が減っていくので、下落率は常に同じであっても下落率を掛ける対象の価格が減少していくからです。
そのため、VXX空売り投資では相場が落ち着いていてVXX価格が順調に下落していく際には、その減少した価格分を穴埋めるように追加投資し、VXXの価値を維持する必要があります。それによって下落方向に作用する複利の作用を無くすことが出来ます。
追加投資は、VXX内部でのVXX先物の日々のロールオーバー損失によるVXX価格下落を補うためのものです。そのため、VXX内部でのロールオーバー損失によらないVXX価格の下落の際には追加投資は必要ありません。これはVIXが下落するのに連れてVXXが下がった時のことです。
また、株式における複利のように、価格上昇方向に作用する複利を作り出すこともできます。その場合はVXXの価格下落を穴埋めし、元本を維持するだけでなく、VXXの利益分(価格下落分)をそれに更に上乗せすれば良いです。つまり、VXX下落分(利益分)の2倍の金額を追加投資するということです。ただしVXXが低水準の時に多くを投資するのもリスクがあるため、出来るならVXXが高騰している時に多くの投資を行いたいものです。しかし、VXXが高騰するかどうかは分からないため、今の水準が未来から見れば一番高い水準であったということも有り得ます。私は、常時維持するポジション額と、VXXが高騰した時に追加投資するための余剰資金額をそれぞれ決めることを勧めます。
追加投資によってVXX元本の価格を一定に維持すれば、VXXの利益率平均は年率60%程度となります。
元本を維持するだけでなく複利を生かすともっと利益率は高くなりますが、私はVXX価格が上昇した際に追加投資を行う方が安全ではあると思います。

この利益率からオプションコストを引いたものが実際の利益率です。
オプションについて解説した項目で示したオプションコスト(デルタおよびセータによる、オプション価格の減少額)をここから引いてみます。
前提としては、追加投資によってVXXの価格(時価総額)を維持し、利益率60%を想定します。残存期間平均を1年半とし、ストライクプライスのVXX価格に対する割合も維持するものとします。
ストライクプライスがVXX価格の2倍のOTMオプションを用いる場合、VXX価格に対する利益率は「60 * 0.58 - 13 = 21.8%」となりました。
ストライクプライスがVXX価格の2.5倍のOTMオプションを用いる場合、VXX価格に対する利益率は「60 * 0.65 -  12.2 = 26.8%」となりました。
3倍のOTMオプションを用いる場合、「60 * 0.72 - 11.2 = 32%」となります。
遠いOTMであるほどVXX価格に対する利益率は増えますが、最大損失額も増えます。
この試算の正確性には自信がありませんので、目安程度にしてください。
こうして見ると、真面目に長期オプションによってヘッジしようとすれば相当なコストが掛かることが分かります。特に税金の問題があり、オプションコストによってVXX空売りの利益の半分を持っていかれると最終利益に対して税率が2倍、つまり40%になります。税がかかると複利も利用しにくいため、複利を利用するためにはVXXの決済を可能な限り先送りするというのも手ではあります。
またはオプションの項で触れたように低い権利行使価格のプットオプション売りを行いオプションコストの一部を回収することが考えられます。またはプットオプション買いによる手法であれば実質税率が高くなる問題はありません。
「VXX空売り+コールオプションのロング」による手法では、オプションコストが嵩むほど実質税率が高くなるため、あまり近い権利行使価格(近いOTM)のオプションは選び辛いです。そのため、最大損失額が増えたとしてもオプションコストの安い、より遠いOTMのオプション(例えば3倍)を選ぶのが良いと思われます。対してプットオプション買いによる手法では実質税率が変わらないため、最大損失が少ない代わりにオプションコストの高い、近い権利行使価格のオプションを選ぶことも出来ます。
ここまでの試算ではVXXが高騰した際の追加投資分は含んでおらず、普段から保有するVXX空売りポジションについての試算となります。

常に一定額のVXX空売りポジションを維持しつつ、VXXが高騰したタイミングで少しずつ追加投資を行うという方法が良いと思います。
VXXが上昇した際の追加投資は一気に行うのではなく、少しずつ売り上がるように行います。どの程度の価格間隔で、どの程度の金額を追加投資するかは投資家次第ですが、あまり上昇していないタイミングで大きな金額を投資するのはリスクのある行為です。
→追記・・・VXXが上昇したタイミングでの追加投資には慎重になったほうが良いと現在は考えています。VXXがかなり上昇するまでは投資妙味は無いものと考えた方が良いと思います。また、追加投資にはプットオプションのロングで行うべきだと思います。
IB証券は月に10ドルの最低取引手数料を課しているため、その範囲で取引できる数を目安にしても良いと思います。

米国VIとの比較

オプションを使用するに伴い、様々なデメリットが発生します。海外証券会社を使わなければいけない事に伴う税金の問題が主にあります。
オプションを使用するので無ければ、GMOクリック証券の米国VIが優れています。
米国VIであれば、損失の3年間までの繰越が可能なので、年度内に損失を出すことを躊躇う必要はあまりありません。また、海外証券会社でオプションとVXXを併用した際のようにこれらの損益通算が出来ない、つまり最終利益額に対する税率が高くなるということもありません。
米国VIを使用する場合は、ロスカットを主としたリスク管理が必要となります。オプションよりは投資家の技量に左右されやすい方法と言えるかもしれません。

米国VIで長期のショートを行うならば、ロスカット水準を階段状に設定するのが良いだろうかと考えます。
例えばVIX指数が25を超えるまでは、VIが上昇するに従って少しずつ売り上がります。売り上がった追加投資分のロスカット幅(ロスカット値と建玉値の差)を一定にすることで、ロスカット水準は階段状になります。VIX指数が25を超えると割と相場が危険水域に入っていると見做し、追加投資を停止するか、VIを段階的にロスカットしていきます。
その後、相場が更に上がるようなら、余剰資金がある場合は様子を見ながら再び追加投資(ショート)をしていきます。逆に相場が落ち着いてきた時はロスカットされたVIポジションの分を再度ショートしますが、そのタイミングは投資家に依存することになります。
常時運用するVIの最大損失額と、VIが高騰した際に追加投資する分の最大損失額をそれぞれ決め、その中で運用することが大事だと思います。最大損失額から逆算し、VI一つあたりのロスカット幅を決定します。

以上のような投資戦略が考えられますが、私が実際に運用した上での経験ではありません。VXX+オプションとは別に米国VIでも運用してみようかとも考えます。
オプションは手軽にリスクを限定できますが、ロスカットは投資家のやり方によって結果が左右され、不安定要素のあるリスク管理方法ではあると思います。オプションを用いた場合に比べて損が少なく利益が出る場合もあれば、逆もあると思います。しかし米国VIは様々な優位性があるため、利用する価値はあるのでは無いかと思います。

オプションの原理というのは、例えばコールの場合、原資産価格(VXX価格)が上昇するに連れて原資産を段階的に買い、下落するに連れて段階的に売るという事を自動で行ってくれるシステムであると言えます。原資産0~100%の間で買いと売りを繰り返します。上昇すれば買い、下落すれば売るので、これは順張りとなります。ボラティリティが高いほど順張りにはコストがかかります。その代わり、これはショートポジションが高騰した際のロスカットを段階的・自動的に行うと共に、水準が元に戻ってきたら段階的・自動的に再度ショートするシステムとなります。
つまりロスカットとポジションの再構築を両方自動で行ってくれるシステムです。ポジションの再構築が無ければ、ロスカットした後に相場が元に戻った時でも、損失が回復しません。人間が手動で行う場合は、ロスカットだけなら簡単なのですが、ポジションの再構築することも含めるとなかなか難しくなります。ポジションの再構築をした後に、またロスカットを迫られる水準になることもあり、そのような事を頻繁に繰り返そうとすると難しいものがあります。しかしオプションならそれを自動で行ってくれます。
手動でロスカットを行う場合は、ポジションの再構築はある程度諦めることも必要かと思います。ロスカットが発動した後に相場が戻って、損失が回復しないリスクをある程度受け入れることが必要かと思います。その代わり、最大損失額はしっかりとコントロールできますので最悪のケースには対処できます。つまり、損失は取り戻せないケースが出るにしても、予め決めた最大損失額を上回る損失を出す可能性は低いということです。可能性が低いというのは、ロスカットが効くのは取引時間中だけであるという点を考慮してとなります。しかし、米国VIは土日以外ならほぼ一日中が取引時間となりますのでそのリスクも通常の株式と比べたら低いです。

現時点でのまとめ

できるだけ安全にVXX空売りを行う方法として、超長期のオプションを購入するという方法を紹介しました。しかし、これには相当なオプションコストがかかります。一方で短期オプションでは相場によってコストがかなり左右され、平常時であればコストはかなり低いものの荒れ相場では長期オプションのコストを遥かに上回る可能性があると考えています。
オプションによるヘッジを行う場合、「コールオプションの買い+VXX空売り」と「プットオプションの買い」の2種類の方法があります。
ちなみに、「最も低い権利行使価格のコール売り+コール買い」でも似た原理を作れます。「最も低い権利行使価格のコール売り」はVXX空売りの代替となります。しかし私が試したところ、コール売りが直ぐに権利行使されてしまいました(残存期間が1年以上あるにも関わらず)。この事からも、deepITMのオプションの売りは権利行使される可能性があるためお薦めできません。→追記・・・おそらく本質価値を下回る価格で注文したことが原因だと思われます。スプレッドは最低で0.01であるため、時間価値を0.02以上残したものを購入しないと、本質価値以下での注文になります。

「コールオプションの買い+VXX空売り」と「プットオプションの買い」の違いは、主に税制面となります。
私は今までは前者の方法で行ってきましたが、後者の方法も試してみようと思っています。大きな利点は、「プットオプションの買い」では最終利益に対する実質税率が変わらないこと、そして税制上の損失額が、実際の損失額と一致していることです。税率自体は総合課税となり高所得者には不利です。
「コールオプションの買い+VXX空売り」では、利益に対する元々の税率は20%ですが、オプションコストを必要経費として控除できないため、実質税率は2倍程度には容易になり得ます。それでも総合課税の最高税率よりは低いです。また、悪相場の中でVXXを決済しなければいけない状況があれば、税制上の損失額はVXX空売りの損失額となるため、実際の損失額(VXX空売りの損失額からオプションの利益を引いた額)よりも大きくなります。年度内に確定した損失額は翌年度に繰り越せないため(オプションを利用できる海外証券会社の場合)、その損失分を翌年度以降に取り戻しても、それに対して税がかかります。つまり、「年度内に確定した損失分*税率(20%)」の分だけ余計にコストが掛かります( *(アスタリスク)は乗算です)。VXX空売りの損失額は理論上無制限であり、相場によってはかなりの損失額になる可能性があるため、この点は気を付けたいところです。これを回避するためにVXX空売りを行う際には出来るだけ利益確定せずに含み益を蓄えておくという方法を紹介しました。
年度内に損失が確定する可能性に関しては「コールオプションの買い+VXX空売り」と「プットオプションの買い」でどちらも似たようなものだと思います。前者ではVXX空売りが途中で強制決済される可能性があり、後者では満期日までにロールオーバーが行えない場合(相場が1年間ずっと荒れていて、ロールオーバー時に損失が確定しないタイミングが見つからない場合)があります。
VXX空売りには強制決済リスクがあり、強制決済された際には代替の投資先を見つける必要があります。それに対してプットオプション買いでは強制決済リスクは無いのではないかと思います(新規建ては禁止されるようです)。
総合的に考えると、プットオプション買いのほうが利点が大きいかもしれないと思っています。総合課税による高税率対策としては、合同会社の設立が考えられます。

コールであれプットであれオプションを購入する際の注意点として、残存期間2年超の長期オプションは流動性が低くスプレッドがかなり開いており、スプレッドコストが高く付く可能性が高いということがあります。スプレッドが開いている銘柄は慎重に注文する必要があると思います。取引時間の始まりから30分~1時間程度はスプレッドが開いている傾向にあると思います。また、残存期間が2年超のオプションはスプレッドが広いので、残存期間が2年程度または2年以内になるまで待った方が良いかもしれません。2年程度まで待てばスプレッドが狭くなると感じています。スプレッドコストは痛いので、頻繁にオプションの乗り換えはしない方が良いと思います。

2019年8月19日 (月)

IB証券における証拠金の計算方法

IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ)における証拠金の計算について、私が理解し得た範囲でまとめます。
コモディティ(先物)については有価証券(現物)とまた違う証拠金となるため、ここでは取り上げません。
ここでは有価証券(株式オプション含む)についての証拠金計算についてまとめます。また、RegTマージン口座での計算方法になります。

IB証券のホームページにて証拠金の計算方法が示されていますが(以下参照)、かなり複雑で分かりにくいので、このページを基にして説明を加える形で説明したいと思います。
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=27587

まず、IB証券を初め米国のウェブページに記載されている数式を読む際の留意点として、「*」は乗算のことであり、「(1000)」のように数字が括弧で囲われているものはマイナスを表します。

証拠金はいくつかの異なる方法でチェックされます。
主に、取引時の委託証拠金のチェック、リアルタイムでの維持証拠金のチェック、市場の取引時間終了時のSMAのチェック、加えてレバレッジのチェックがあります。
各有価証券には必要証拠金(委託証拠金、維持証拠金、RegT委託証拠金)がそれぞれ設定されていますが、日本居住者の場合、RegT委託証拠金以外の証拠金については明確な証拠金率は示されていません(以下参照)。
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=27243
おそらく、その都度取引ツール上で対象銘柄の必要証拠金を確認するしか方法は無いと思われます。
ただ、私が確認したところ通常であれば株式の場合、委託証拠金25%、維持証拠金25%となるようです。RegT委託証拠金は通常50%です。
RegT委託証拠金は、取引時間終了時のSMAの計算に必要な証拠金です。通常、証拠金率が他よりも高いため、気を付けて欲しいポイントです。
オプションの証拠金については、その原資産も保有する場合には一つのグループとして証拠金が計算されるようです。

これらの各有価証券の必要証拠金を基にして複数の証拠金チェックが行われます。
この際の計算方法が初めに挙げたURLに書かれているものです。
ここで簡単に計算式を記すと
取引時:
貸付金額を含む資産価値(ELV) - 委託証拠金 ≧ 0
保有時:
貸付金額を含む資産価値(ELV) - 維持証拠金 ≧ 0
取引時間終了時:
SMA ≧ 0
となり、更に取引時と保有時にレバレッジ・チェックがあります。

ただし、書かれている用語の意味が分からないと理解できません。
用語の説明は以下のページを参考にできます。
https://ibkr.info/node/1445
https://www.interactivebrokers.com/en/software/docs.orig/tws/usersguidebook/realtimeactivitymonitoring/balances.htm#XREF_26037_Balances

分かりにくい用語をここで解説します。
ELV(貸付金額を含む資産価値, Equity with Loan Value)とは、NAV(流動性資産価値)から米国オプション価値を引いたものです。ショートオプションの価値(マイナスの数値)も算入されないようなので、オプションによる損益の影響は受けないと思われます。ELVおよびNAVに含まれる現金には株式やオプションのショートによって得られた現金も含まれます。株式のショートポジションは、マイナスの価値として算入されます。このELVは証拠金計算の基となります。SMAの計算の際に用いられるELVはRegT ELVと表され、多少金額が異なるようです。
NAV(流動性資産価値, Net Asset Value)とは、その時点での清算価値のことです。
NLV(Net Liquidation Value)は、NAVと同義だと思われます。
有価証券グロスポジション価値(Securities Gross Position Value)は、ポジションの合計価値で、現金は含めず、ショートポジションもプラスの価値として算入します。レバレッジ・チェックに用いられます。
また、レバレッジ・チェックの計算式の中で「先物・オプション価値」と記載があるところがありますが、これは先物オプションの価値のことです。

取引時間終了時のSMAに関しては、SMA(SMAバランス)がゼロ以上であることが求められます。
SMAの計算にはRegT委託証拠金が使用されます。
通常の証拠金計算とは異なり、ポジションの価格下落によってSMAが減ることはありません。
SMAが減るのは、主に現金の引き出しと、ポジションの新規建ての際となります。
計算式を以下に引用します。
以下の2つのうち大きい方がSMAとなります。
[前日SMAバランス +/- その日のキャッシュバランスの変化 +/- 本日の委託証拠金]
[貸付金額を含む資産価値 - Reg Tマージン]

後者の計算式が、通常の委託証拠金、維持証拠金の計算式と同じ方式です。
ELV(貸付金額を含む資産価値) - RegT証拠金 ≧ 0
が要求されることになります。
これだけだとポジションの価格変動の影響を受け、ポジション価格が下落すれば上の式の左辺の値も下落します。
しかし、前者の式があることで、SMAはポジションの価格下落の影響を受けないようになっています(価格上昇の影響は受けるようです)。

SMAは、ポジションの保有が無い時は現金額と同じになります。
前者の計算式にある「その日のキャッシュバランスの変化」については、全てのキャッシュバランスの変化を示しているのではなく、特定のキャッシュバランスの変化を示します。具体例がIBの証拠金ページの「SMAルール」に載っています。
「SMAルール」にあるデイトレーディング損益とは、その日のうちに同じ銘柄の買いと売りを行った際の損益のことです。
前者の計算式にある「+/- 本日の委託証拠金」とは、有価証券を購入した際にはその分のRegT委託証拠金が引かれ、売却した際にはその分のRegT委託証拠金が足されるということです。
SMAの計算方法は複雑で良く分かりませんが、IB証券ではリアルタイムのSMAバランスを取引ツールで確認することが出来ます。ただし、取引時間中のリアルタイムSMAについてはポジションの価格下落によってSMAが減少することがあると思いますので目安と捉えた方が良いかもしれません。前日のSMAからはポジションの価格下落によってSMAが下落することはありません。
まとめると、日を跨いで保有する予定の新たなポジションを建てる際は、委託証拠金、維持証拠金を満たすだけでは無くSMA要件を満たす必要があります。
特に多くの株式は委託証拠金、維持証拠金が25%なのに対してRegT証拠金は50%であるため、注意が必要です。

2018年9月12日 (水)

オプションキャッシュフロークラブのレビュー

オプション取引の実践者、そしてオプション取引の本の著者としても有名な増田丞美氏の主催する「オプションキャッシュフロークラブ(OCFC)」という会員制のクラブがあります。
日本で一般の人がオプション取引を学ぶには、方法が限られています。
日本で出版されているオプションについての本は数が少なく、そのほとんどが増田氏の著書または翻訳本です。
オプションの情報は、ネット上にもある程度の情報はあるので参考になります。
有用そうなサイトとして以下を挙げておきます。
https://toushi-kyokasho.com/
https://mf-aa.co.jp/
https://www.option-dojo.com/

私は増田氏の著書、翻訳本を大方読み、ネット上の情報にも目を通した上で、更に知識を得たいと思い「オプションキャッシュフロークラブ」に入会してみることにしました。
今回、当クラブについてのレビューをしてみようと思います。

「オプションキャッシュフロークラブ(OCFC)」は、増田丞美氏と「エンジュク株式会社」が提携して作られたクラブです。
「エンジュク株式会社」は、投資に関する情報やセミナーを提供するビジネスを行っている会社です。
「エンジュク株式会社」は、OCFC以外にも様々な投資情報、セミナーを提供しています。
一つの投資手法の価格は数万~数十万円です。
私が感じた限りでは、有用そうな情報が揃っているように感じました。
価格設定は一般人からするとなかなか高いものもありますが、提供された投資手法を自分のものに出来れば十分元は取れそうな感じは受けます。
また、関連するホームページにて無料で情報提供も行っており、かなり参考になります。
上で紹介したサイトhttps://toushi-kyokasho.com/がエンジュクの運営するサイトです。

OCFCに関しては、三か月50000円程度と、クラブなので会費制となっています。
継続して加入し続ければ1年で20万円ですからかなり高価ですが、三か月だけ加入するということもできますので、その場合は比較的安いと思います。

クラブの紹介する投資手法の具体的な内容については有料情報のため、ここで直接触れることは出来ないのでレビューもしにくいのですが、大体の感じを書いていこうと思います。

増田氏は現在「ナンバーオペレーション」という手法を紹介しています。
私はこれに興味を持って入会しました。
しかし、結局私はこの手法の理解が出来ませんでした。
具体的には、VXXを代表とする「漸減数値」を空売り(ショート)することを中心とした手法です。
漸減数値とは、長期的に数値が減り続ける性質をもった証券です。
空売りすれば長期的には利益が出ますが、短期的に数値が上昇するリスクがあります。
そして、ナンバーオペレーションを実行するには「ある思考」が重要だと言うことです。
重要なのは、技術よりも思考である、ということです。
その思考に自らを導くため、実際の取引では、私から見れば論理的に無駄が多いと思うような取引方法を用いています。
具体的には、「両建て」に似たポジション、そして「決済と新規建て」を同じ銘柄で連続して行うような手法です。
また、VXXだけでは無く、それ以外の似たような銘柄を多く扱うのですが、これについても経済的な観点から見れば必要が無いと思えます。

そして、リスクコントロールについての技術的な説明が少ないということがあります。
元々私は、この手法つまりVXXなど長期的に数値が減り続ける証券を空売りするという手法について勉強しており、この手法を実行するにはリスクコントロールが最重要だと考えていました。
そして、OCFCに入る事で、より良いリスクコントロールの手法を学べるかなと思っていました。
しかし、実際は技術的なリスクコントロール手法は殆どありませんでした。
増田氏の見解としては、「思考」を物にすることで自然とリスクコントロールができるということだと思います。
その思考方法そのものは良いと思える部分もあるのですが、私の理解が及んでいないのか、やはり技術的なリスクコントロールの方法について学ばないとかなりリスクが高いと思ってしまいます。
実際に、OCFCで教えている情報のみに頼って、初心者の方が取引を実行してしまうと、とてもリスクが高いように思えます。
例えば、資金配分の具体的な数値を提示しなかったり、証拠金制度(マージン制度)の理解について疎かにしていること等が、問題だと思います。

リスクの話は以上ですが、次に、コスト意識が低いということがあります。
無駄の多いと思われる手法を取ることにより、必然的にコストがかかりますが、意識の上でもコストを軽視しているように見えます。
元々収益性の高い手法なので、コストを無視しても収益を上げられることは確かですが。
ナンバーオペレーションは、無駄に多くの証拠金を要し、また、無駄に多くのコストをかけている手法だと私からは思えます。
しかし、これは決して増田氏が適当な教え方をしているという訳では無く、増田氏にとっては熱意をもってやられているということを私は感じます。
単に、そういった手法について私は理解し難いというだけで、価値観の問題だろうと思います。
しかし私だけではなく、多くの人にとっては、増田氏の手法は非論理的で理解し難いものに映るだろうと思います。
実際、「質問箱」でもそういった質問がいくつかありました。
理解しようにもなかなか理解できないという会員の方がやはり多いように思います。
私も理解しようとはしたのですが、やはり理解はできませんでした。
もっとも、取引を実行していく中で感覚的に理解していくことが大事なのだという趣旨の事が書かれてありましたが、私としては、納得できない事はしたくないということもありますし、実際に実行したとしても、やはり理解できないように思います。
また、経験によって得られる感覚を完全に頼るのはどうかと思います。経験だけで、下手に分かったような気になるのはリスクが高いと思うので、私はやはり論理的に考えた上で取引に臨むことが大事だと思います。
これは私が素人ということで、リスクをなるべく抑えたいという完全主義的考えになっていることもあるかもしれませんが、経験を積んだことによる過剰な自信や慢心によって身を滅ぼすこともあると私は思います。
もちろん、経験しなければ分からないことも沢山ありますが、経験によって得られる感覚だけに頼るのはリスクが高いと思います。
ということで、私としては、期待した内容のものは無かったのですが、その「思考方法」そのものは参考にはできると思います。
しかし技術的な事を学ぼうとすると、期待外れかもしれません。
もちろんOCFCでも技術面でのレポートは多いです。しかしそれは、私から見たら非論理的で無駄だと思える手法の技術的な説明です。
私の希望としては、「世の中の一般的な考えでは増田氏の手法や考えは理解できない」ということを増田氏にもっと理解していただき、もっと私たちでも理解できるように説明してほしいと思ったのですが、増田氏の見解としては、「実際にその手法を用いて実行し、経験することで感覚的に理解していくことだから、言葉では教えられない」ということのようです。
私にとっては、OCFCの手法よりもエンジュクの運営するページhttps://toushi-kyokasho.com/で提供している情報のほうが有用にも思えました。

ナンバーオペレーション以外には、「P-1」という手法を前はメインとして扱っていましたが、現在では完全にナンバーオペレーションに移行しています。
「P-1」というと何のことか良く分かりませんが、特別な事はありません。
増田氏の著書を始め、オプションについて勉強した人なら誰でも知っているオーソドックスな手法ですが、シンプルながら強力な手法として紹介されています。
増田氏の著書には「ストラングルスワップ」「NOPS」「OPS」など割と高度な手法も紹介されていますが、そのような難しい手法は「P-1」にとって替わり、更に現在ではナンバーオペレーションにとって替わったようです。

OCFCの内容は、レポートの内容量が多く、その他にPDFと動画があります。
レポートは何度も同じ内容、似た内容の記述が繰り返されるため、内容量がとても多くなっています。
主に「思考方法」についての記述が大半を占めます。それだけ会員の方に理解してもらいたい内容なのだと思います。

私としては、その「思考方法」は参考にできる、または納得できる部分はあるとしても、やはり全体としては理解できませんでした。
なぜ、その思考方法のみで上手くやっていけるのかが分かりませんでした。
実際の取引では、その思考方法をする、または維持するために、通常の考えからしたら無駄だと思える方法をとっています。
それだけ思考が大事だということだと思いますが、そこまでしなければ、その思考にはなれないということでしょうか。
逆に、そういう取引方法をすれば、そのような思考になれる(近づける)のでしょうか。
レポートをずっと読んでいても、これらの疑問に対する論理的な説明が薄いので、結局良く分かりません。
そして、その理解には実際に実践して経験していくしか無いということです。

これは、かなり心理学的な要素がある手法です。
しかし心理や思考回路は人それぞれですし、私は、感覚よりも論理で考える性質です。
そのため、結局やっていることは同じなのに、思考を誘導するために敢えて無駄な取引をするという考え方への理解ができません。
本質的に同じことは、形が違っても同じことだとしか考えられません。
受け取る感覚も同じだろうと思います。

OCFCは、ここで挙げた事を中心に、一般的な考え方からは離れた考え方を示していると思います。
だからこそ、より納得のできる説明が無ければ多くの人にとっては理解できないものだと思います。
そのため、より筋道の通った説明があれば良いと思うのですが、なかなかそうは行かないようです。
レポートの量から熱意は伝わってきますが、結局本質的な部分が伝わってきません。
増田氏は、「自分で考えることが大事」というスタンスですから、あくまでヒントだけ提示するという方法を取っているようです。
しかし、それはあくまでも増田氏の考え方が「正しい」、つまり他の人にとっても「正しい」という前提に立っている行為です。
そもそも増田氏の考え方が理解できない状態では、その考え方をしっかりと説明してもらわないと、それが私自身にとっても「正しい」のか、つまり、納得できるのか、できないのかという判断ができません。
それとも、自分が納得できない事でも他人に言われた通りに実行すべきなのでしょうか。
その辺りは人にもよるかと思いますが、やはり私は実行しにくいです。
実際に実践しながら掴んでいく感覚が大事ということですが、それを実行するための納得できる根拠は必要だと思います。

OCFCの現在主力の手法であるナンバーオペレーションについてはAmazonでKindle版書籍が出ているので、興味がある方はこちらを参照して頂くのが良いかと思います。クラブに入るよりも遥かに安く、基本的な内容を知る事が出来そうです。


ナンバーオペレーション入門: 進化したオプション戦略


また、オプションキャッシュフロークラブの募集サイトは以下になっています。
https://toushi-kyokasho.net/ev/ocfc/special.html

2018年8月11日 (土)

ソニー銀行からFirstrade証券への送金

私は米国の証券会社であるFirstrade証券に口座を開設しました。
Firstrade証券についてはFirstrade証券、およびIB証券について を参照して下さい。
その際海外送金手続きが必要なのですが、ソニー(Sony)銀行からの送金が思ったよりも速かったということ、そしてその他海外送金にまつわる話を書かせて頂こうと思います。

ソニー銀行からの海外送金は、少なくともFirstrade証券への送金の場合にはお薦めの送金方法の一つです。
私は金曜日の朝に送金手続きをしたのですが、月曜日の夜にはFirstrade証券へ着金していました。1営業日と半日しかかかっていません。
ソニー銀行の説明では、朝のある時間(8時くらいだったか)までの送金手続きは翌営業日の送金になり、送金実行から2~3営業日以上かかると書いてあったのですが、全くそんなことが無かったです。

中継銀行手数料などは全く取られず、かかった手数料は送金手数料の3000円と、為替手数料のみです。
為替手数料ですが、これはややソニー銀行ではネックとなる部分で、通常ソニー銀行内で両替すると、1ドルにつき15銭かかります。
これは通常の銀行の為替手数料に比べると大幅に安くはありますが、それでも大金を扱うほどにそのコストが重くなります。
これを軽減するには、FX会社でまず安く両替して、それを銀行に送るという手段が一般的ですが、ソニー銀行の場合、FX会社から外貨を送金してもらうことが難しいかもしれない、ということがあります。
というのも、ソニー銀行は外貨の受け取りに際して中継銀行の指定を義務としているのですが、FX会社はこれに対応していません。
しかし、おそらく中継銀行を指定しなくとも着金はできると思います。
ただ、FX会社として一番安く利用できるYJFXでは、公式にソニー銀行への外貨送金を不可としているため、代替としてセントラル短資FXを利用することになります。
セントラル短資FXはYJFXほど両替が安くはありませんが、それでもソニー銀行内の15銭での両替よりは安くできるのではないかと思います。
このあたりは、ケースにもよるかもしれませんので個別に計算していただきたいと思います。

しかし、ソニー銀行では現在、毎月1回、雇用統計の日というものがあり、この日は全ての顧客が1ドルを7銭で両替できます。
日にち限定ですが、この日を狙えばFX会社を利用する必要がありません。
かなり安くなります。

そして、これは無視しがちですが手数料を考える際に軽視できないこととして、あまり長く外貨(米ドルなど)を金利を付けずに放置しないことです。
低金利通貨なら良いのですが、米ドルのように一定の金利が付く通貨は、通常の銀行口座のように十分な金利が付かない口座で眠らせておくと、本来得られるべきものが得られないということが起こります。
これは、金額が大きいほど顕著です。
証券会社への入金であれば、速めに入金して、すぐにMMFか、短期国債ETFなどを購入すると良いと思います。
Firstrade証券にはMMFはおそらく無いので、ETFを購入しました。

手数料については以上です。
そしてソニー銀行のもう一つの利点は、海外送金に際して厳しいチェックが無いことです。
というと場合によっては聞こえが悪いかもしれませんが、むしろ不当なチェックが無いということで本来は当然のシステムだと思います。
最近はマネーロンダリング対策などで、海外送金が厳しくチェックされるようになり、ネット上でも銀行で海外送金を断られたという話を聞きます。
私も初めは新生銀行にて海外送金をしようとしてのですが、チェックが厳しく出来ませんでした。
ケースによっては簡単に送金できるとは思いますが、大事なのは送金原資の証明です。
給与が振り込まれた口座から直接、海外送金をする銀行口座に振り込めば、原資の証明ができるので大丈夫だと思いますが、一度現金で引き出したものを入金したり、そもそも給与を現金で受け取っているアルバイトの方などは証明が厳しくなるかもしれません。
また、新生銀行では送金先の証明も必要でした。
私の場合、証券会社のホームページ上で、私が取引する商品が載っているページ、自分のアカウントナンバーと名前が表示されたページが必要ということでした。

ソニー銀行では事前に送金目的や年間送金予定額を入力しますが、それ以上のことはありませんでした。
また、海外送金の規制について電話で問い合わせた際も感じ良く応対してくれたので、私の印象は良いです。

海外送金には他にはSMBCプレスティアを利用する方法もありますが、最低預金額の設定があり、これを守らないと口座維持手数料が発生しますので、資産をフル活用して資産運用したいという人にはやや向かないかなと思います。
ただしYJFXと連携して活用すれば、安く海外送金ができます。
数十万円までの海外送金には、銀行口座から海外送金するのではなく、トランスファーワイズなどを使う方法が有名です。